COLUMN
2023.02.22
日本の消防設備略語まとめ:覚えておきたい重要な用語
日本の消防設備には、長い名称が多く使われています。
これは、安全性を高めるために、正確な表現が必要だからです。
しかし専門用語の正式名称は長いため、略語が多用されています。
消防士の間では、より正確かつ迅速な指示や意思疎通のために、様々な用語が略され、使われています。
しかし、略語は初めて消防に携わる人には理解しづらいものです。
この記事では、消防用語の中でも、特に頻繁に使用される略語について解説していきます。初心者でもわかりやすいように、略語とその意味を紹介していきますので、現場での作業や火災の対応などに役立ててください。
消防設備の略語
屋内消火栓
屋内消火栓は、内栓(ないせん)と略されます。
屋内消火栓は、火災が発生した際に水を供給する設備で、建物内に設置されています。
内栓は、消火活動に使用する配管の栓を開閉するための設備で、消火栓と呼ばれることもあります。
屋外消火栓
屋内消火栓は、外栓(がいせん)と略されます。
日本の消火栓のうち、建物の外壁などに設置されたもののことを指します。
火災が発生した場合、近くにある消火栓を使って、消火活動を行うことができます。
この消火栓の略称として、外栓という言葉が使われています。
動力消防ポンプ
動力消防ポンプは動力(動力)と略されます。
動力消防ポンプは消防用のポンプで、エンジンを搭載しています。
条件を満たせば、屋内外消火栓の代替設備として使えます。
動力消防ポンプは大まかに3つのパターンで使われます。
・車に設置して消防ポンプ車のように使用
・ゴロゴロと動かせる台車に乗せて使用
・ポンプを地面に据え置いて使用
スプリンクラー
スプリンクラーはSP(エスピー)と略されます。
建物内に設置された火災自動報知設備の一種で、火災が発生すると自動的に作動し、水を噴射して火を消すものです。
スプリンクラーの略称として、SPという言葉が使われています。
泡消火設備
泡消火設備は、泡消火・泡(あわしょうか・あわ)と略されます。
泡消火は、特殊な発泡剤を使用して、泡を発生させて火災を消火する方法です。
この消火方法に用いる装置のことを、泡消火設備といいます。
通常の消火設備は水を使用するため、水では消火が困難、あるいは火災を拡大させる可能性がある場合に使用されます。
そのため、油火災への使用を想定しており製造所や危険物取扱所で使用されています。
略して泡消火・泡という言葉が使われています。
粉末消火設備
粉末消火設備は粉末消火(ふんまつしょうか)と略されます。
火災を消すために、特殊な粉末を使用する消火設備のことを指します。
薬剤を含んだ粉末が、火災の熱により分解して不活性ガスを発生し、噴射に用いた窒素ガスと合わせて空気中の酸素濃度を薄め、窒息効果をもたらします。
油火災や液化ガス火災に対する消火能力を有する設備です。
この消火設備の略称として、粉末消火という言葉が使われています。
不活性消火設備
不活性消火設備は、ガスと略されます。
不活性消火設備は、消火剤として酸素濃度を低下させることで、燃え広がるのを防ぐ設備で、電子機器を保護することができます。
ガスは、不活性ガスとも呼ばれ、窒素ガスや二酸化炭素ガスが使われます。
二酸化炭素を放出するタイプの消火設備は、令和に入ってから工事や点検時に死亡事故が多発しています。
使用の際は細心の注意を払ってください。
ハロゲン化物消火設備
ハロゲン化物消火設備はハロンと略されます。
これは、ガス系消火設備のなかでも、消火薬剤にハロンを使用するものをハロゲン化物消火設備と決めているためです。
ハロゲン化物消火設備は、特殊なガスを使用して、火災を消火する設備です。
単位容積当たりの消火性能が高い為、油火災に使用されるほか、耐電性・耐金属腐食性が大きいことから、通電中の電気機器にも使用されます。
この消火設備の略称として、ハロンという言葉が使われています。
簡易自動消火設備
簡易自動消火設備は簡易消火(かんいしょうか)と略されます。
簡易自動消火設備は、火災が発生した際に、自動的に消火活動を行う設備のことを指します。
消火薬剤の放出口と薬剤貯蔵容器とが一体になっているようなものです。
飲食店のキッチンなどに多く設置されており、油火災の延焼や換気扇が火を吸い込むことを防いでくれます。
この消火設備の略称として、簡易消火という言葉が使われています。
自動火災報知設備
自動火災報知設備は自火報(じかほう)と略されます。
火災が発生したことを検知し、自動的に警報を発する設備で、早期の消火活動を促します。
建物内に設置された複数の火災報知機から特定の一台が火災を検知すると、他の機器に自動的に信号を送り、音や光で知らせます。
さらに、消防署に自動的に通報することもあります。
この消火システムの略称として、自火報という言葉が使われています。
特定小規模施設用自動火災報知設備
特定小規模施設用自動火災報知設備は特小(とくしょう)と略されます。
特小は、火災が発生した場合に自動的に火災を検知し、警報音や光で知らせる設備です。
基本的には自火報と同じですが、設置基準が異なります。
一般的に、カラオケやホテル、老人ホームのうち、300平方メートル未満の場所に設置されています。
特小は、火災に早く気づくことで火災の早期発見、早期鎮火につながり、被害を最小限に食い止めることができます。
この特定の小規模施設に設置される消火システムの略称として、特小という言葉が使われています。
漏電火災警報器
漏電火災警報器は漏電警報(ろうでんけいほう)と略されます。
漏電火災警報器は電気機器の漏電が発生したときに警報を発する装置です。
漏電とは、電気回路と接地されていない部分に電流が流れる現象で、絶縁不良や損傷によって発生します。
火災通報装置
火災通報装置は火通(かつう)と略されます。
あらかじめ録音された自動音声を自動で消防署などに通報する設備です。
自火報が作動したときに合わせて自動で通報する方法と手動で通報ボタンを押す方法の2種類があります。
火災が発生したときに、消防局などに通報する装置の略称です。
避難ハッチ
避難ハッチはハッチと略されます。
ハッチは災害時に建物から脱出するために設置されています。
マンションのベランダに設置されていて、安全性の観点から上下の階で設置場所がずれるように設計されているんです。
火災などの災害時に使用される、建物の外への脱出口の略称をハッチといいます。
連結送水管
連結送水管は連送(れんそう)と略されます。
連結送水管は消火活動上必要な設備の一つで、消防隊が消火活動をするために送水するための設備です。
高層建築物や地下街などに効率よく送水を行うために設置されています。
消火活動に必要な水を、複数の消防車からつないだ管で運ぶことができる管の略称です。
連結送水管耐圧試験
連結送水管耐圧試験は連送耐圧(れんそうたいあつ)と略されます。
文字通り、上記で紹介した連結送水管の耐圧性能に関連したテストです。
テスト時に現場で使用されうる高い圧力をかけた上で配管の誤接続や漏水、バルブのゆるみなどがないかを確認します。
連結送水管の耐圧性を確認するための試験の略称が連送耐圧です。
防火ダンパー
防火ダンパーはダンパーと略されます。
防火ダンパーは火災時に炎や煙がダクトを通って拡散しないように制限する設備です。
火災を検知すると、自動的にダクトがシャットアウトされるので火災の延焼を防ぐことができます。
火災などの災害が発生した場合に、建物内の空気の流れを制御する装置の略称をダンパーと呼びます。
機器類
煙感知器
煙感知器はシンプルに煙とだけ呼ばれることもあります。
煙感知器とは、建物内に設置され、煙を検知して火災を通報する装置のことです。
感知器の点検などを行う際に
「次は煙ね~」
などと言われたら煙感知器の可能性が高いです。
熱感知器
煙感知器と同様に、熱感知器も熱と略されることがあります。
熱感知器は、火災発生時の熱を検知して火災を通報する装置のことです。
建物の規模によっては感知器の数も膨大になるので、自然と略して呼称することがメジャーになるのかもしれません。
その他
消防計画
消防計画は単純に計画書とだけ呼ばれることがあります。
消防計画とは、普段の火災予防活動や災害発生時の自衛消防活動等をあらかじめ定め、管理権原者等が所轄の消防署へ提出するものです。
管理権原者の変更や建物の増改築により変更があった場合は都度所轄の消防署へ提出が必要です。
防火対象物点検
防火対象物点検は防点と省略されることがあります。
防火対象物点検とは、「防火対象物点検報告制度」に基づいて行われる点検の一つです。
建物内の防火管理が適正かどうか、基準をしっかり満たしているかなどを点検し、不備があれば改善する作業のことです。
応急措置や救急救護などの管理体制も点検の対象になります。
無窓階
無窓階は無窓とだけ略されることがあります。
無窓階とは、建築物の地上階のうち、避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階と定められています。
たとえ窓があっても小さすぎると消火活動に適さないため、無窓階扱いになります。
略称の「無窓」は、窓がないことを意味する単語「無窓」という言葉の省略形です。
まとめ
基本的に、「〇〇消火栓」「〇〇区画」など似たような名前がある場合は、共通している部分を削除して呼称したり、頭文字を取って略したりします。
今回紹介したのもほんの一例であり、各々の会社や業者さんによって呼び方が異なる場合もあります。
略語は消防士や関連した仕事に長年従事している人にとっては一般的な表現ですが、初めて聞く人には意味が分からないこともあります。
略称や通称はいずれ体になじんでくるものですので、経験して学んでいきましょう。
消防設備に関連した略語をひとつでも理解しておくと、仕事をするときに作業効率が上がるかもしれませんよ。
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