消防点検コラム

消防用設備

2023.01.27

火災通報装置の設置義務は?火災報知設備との連動についても解説

「火災通報装置の設置義務は?」や「火災通報装置って何?」と考えたことはありませんか?火災通報装置は火災発生時に自動的に119番通報する装置のことですが、2015年の法律改正によって設置義務が課せられた建築物もあります。

一方で、火災通報装置の設置義務については複雑な条件があることや、その仕組み、コストなどについてよく理解できていない人もいるようです。

そこでこの記事では、火災通報装置の設置義務条件をはじめ、火災通報装置とはどのような装置なのか、初心者にもわかりやすく解説します。

火災通報装置とは

火災通報装置とは、火災が発生した場合および火災報知装置が火災信号を受信した際に、自動的(または手動)に消防機関へ通報するための消防設備のことです。

火災通報装置は通常の電話回線を使って消防機関へ火災や異常事態を知らせるもので、あらかじめ録音しておいた内容を自動的に発信する役割があります。

これにより、パニックに陥りやすい火災発生時であっても、迅速かつ的確に消防機関へ連絡がいくようになっています。

また、あらかじめ連絡先の電話番号を登録しておくことで、消防機関以外にも連絡できる機能を備えたものもあり、火災発生時の初期対応を円滑にする目的があります。

消防機関や消防設備に関係している人たちの間では「火通(かつう)」と省略された言葉を用いることもありますが「かつう」と言えば、火災通報装置のことを指しています。

火災通報装置は、基本的には「自動火災報知設備」と連動させて使用します。自動火災報知設備は火災感知器(熱感知器や煙感知器)をはじめ、火災発信機、火災受信機、警報ベルなどで構成されており、火災発生時に自動で連動するようになっており、火災通報装置もこの一部として考えてよいでしょう。

火災通報装置は、病院や養護老人ホーム、障害者施設をはじめ、ホテルや旅館などに設置義務が課せられており、設置義務に関する法律が改正(強化)された2015年以降、消防点検の際に指摘や指導を受けることが増えています。

法律の改正

火災通報装置の設置義務をめぐっては2015年に法律の改正がありました。法律の改正がおこなわれた背景には、2012年5月に広島県福山市で起きたホテル火災、2013年2月に長崎県長崎市で発生した認知症高齢者グループホーム火災が挙げられます。

これらの火災被害を受け、消防用設備等の設置基準等6項目の改正が実施されました。この改正により、旅館、ホテル、簡易宿泊所、そして高齢者福祉施設のすべてにおいて、火災通報装置の設置義務が加わっています。

なお、火災通報装置の設置義務については、2018年3月31日までは実質的な猶予期間である「経過措置期間」でしたが、2018年4月1日以降は消防法令違反の対象となっています。

火災通報装置の仕組み

火災通報装置の設置義務を知るうえで、火災通報装置の構成を理解しておくことが大切です。火災通報装置は以下の機器類で機能する仕組みになっています。

・火災通報装置本体
・火災通報装置用電話機
・連動停止スイッチ

「火災通報装置本体」は、自動火災報知設備と消防機関(消防司令センター)をつなぐための装置で、予備バッテリーを備えているため停電時でも作動するようになっています。

「火災通報装置用電話機」は、消防機関からの逆信(ぎゃくしん)を受け、火災現場と消防機関が直接連絡するために使用します。

逆信とは、消防機関に対して自動的に通報した発信に対して、消防機関から折り返しの発信を受けることを指しており、逆信を受けることでより正確な現場の火災情報や避難状況を共有することを目的にしています。

そして「連動停止スイッチ」は、火災通報装置と自動火災報知設備の連動を解除するために使用するもので、自動火災報知設備の点検や訓練時などの際に、一時的に連動を停止するために用いられます。

仮に、連動停止スイッチがないと、自動火災報知設備の点検時にも消防機関へ緊急連絡が発信されるため、誤発報を防ぐための装置と考えるとよいでしょう。

参考:消防機関へ通報する火災報知設備による誤報について

火災通報装置の音声内容

火災通報装置を使用する際は、自動通報する音声内容をあらかじめ録音しておくことで、火災発生時でも迅速かつ的確に消防機関へ情報が伝わります。

あらかじめ録音しておく内容は、原則として「該当施設の住所と名称」です。録音内容については管轄の消防署と前もって打ち合わせすることが求められます。

録音内容は機械音声として火災時に自動的に発信され、通報を受けた消防機関が逆信(折り返し電話)する決まりです。

逆信によって現場の状況を伝えることができた場合は、状況に応じた対応がとられますが、仮に、現場が混乱状態にあり、逆信に対応できない事態が続いた場合、消防車または救急車が手配されます。

ちなみに、火災通報装置は通常の電話回線だけが使用できます。IP電話や光回線、さらに携帯電話などでは、充電の問題や回線の混雑が懸念されます。

また、火災通報装置に使われる電話回線は最優先される仕組みになっており、火災通報装置の発信中は他の電話は強制的に遮断されます。

火災通報装置の価格帯

火災通報装置の設置義務を守るうえで気になるのはコストだと思います。火災通報装置の価格帯は250,000円程度が目安になるでしょう。

あくまでもひとつの目安であり、既存の自動火災報知設備に付け加える際の工事費などが加わるかもしれません。

多くのメーカーが価格を公表していない理由として、建物ごとに条件が異なることがあります。実質的なオーダーメイド販売のようなかたちと思うといいでしょう。

設置場所

火災通報装置の設置義務と合わせて、設置場所についても理解しておきましょう。火災通報装置は建物内の防災センター、中央管理室、守衛室といった場所に設置するのが原則です。

自動火災報知設備の受信機(制御盤のようなもの)のすぐ近くに設置することが多いものの、管理室が複数存在するような大型施設になると火災通報装置に加えて、遠隔起動装置の設置も勧められることもあります。

 

火災通報装置の設置義務

火災通報装置の設置義務は主に以下の建物の用途および面積に準じて課せられます。

・旅館・ホテル・簡易宿泊所
・病院・診療所
・高齢者福祉施設(利用者の入居または宿泊を伴うもの)
・延床面積が500平方メートルを超える劇場や集会場、キャバレーや遊技場、性風俗店、カラオケ、個室ビデオ、工場、スタジオ、物品販売および百貨店、文化財など
・延床面積が1,000平方メートルを超える料理店や飲食店、学校、図書館、浴場、車両停車場、車庫、神社など

上記の設置義務をわかりやすく解説すると、旅館やホテル、病院、そして高齢者福祉施設は無条件で火災通報装置を設置しなければいけません。(宿泊施設はほぼ例外なく設置義務がある)

その他の用途の建物は「延床面積」によって設置義務が変わります。気を付けたい点として、上記の設置義務基準は消防法であり、各市町村の条例は考慮されていないことがあります。(条例がより厳しい基準の場合も考えられる)

従って、建物管理者は所轄の消防署と行政担当者、さらに消防点検の専門家を交えて設置義務についてすり合わせする必要があることに注意しましょう。

参考:消防法施行令第二十三条

火災通報装置の設置義務が免除される条件

火災通報装置の設置義務が免除される基準は以下の通りです。

・消防機関から著しく離れた場所の場合
・消防機関からの距離が500メートル以下の場合
・消防機関へ常時通報できる電話を設置してある場合

火災通報装置の設置義務免除の基準をめぐっては、法律と管轄の消防署で食い違いが生じるケースがあります。

具体的には、法律上は免除されるはずなのに、管轄の消防署からは設置を求められるといったケースです。

とりわけ、小さな旅館や宿泊室数が少ないホテルといった建物の場合は、このようなことが生じやすいため、所轄の消防署と入念な「消防協議」を実施しましょう。

ちなみに、一般的な旅館やホテル、病院、さらに高齢者福祉施設は、火災通報装置の設置義務に関する緩和措置の対象外ですので、火災通報装置を必ず設置しなければいけません。

自動火災報知設備との連動

火災通報装置の設置義務がある建物の場合、必然的に自動火災報知設備を設置することも義務になります。

これらふたつは連動させることでより効率的な初期対応が実現します。連動させることで火災感知器が火災を感知した時点で自動的に消防機関へ通報され、被害の拡大が抑えられる確率が高まります。

一方で、旅館やホテルといった不特定多数の人が宿泊する施設もこの対象とされているものの、誤作動や誤発報が多いことから、あえて連動させずに「手動対応」にしているケースもあります。

とくに、ユニットバスがあるホテルでは浴室内で生じる湯気を煙感知器が感知し、誤作動すなわち誤発報が起きてしまうケースが多発しています。(不要な緊急出動を生む他、ホテルの評判も下がる)

火災通報装置と自動火災報知設備を連動させるかどうかは所轄の消防署と入念な打ち合わせをしつつ、万が一の時でも確実に機能する状況を作ることが求められます。

まとめ

火災通報装置の設置義務は、原則として旅館やホテル、高齢者福祉施設といった宿泊を伴う施設では必ず適用されるようになっています。

また、法律改正の周知が行き届いておらず、設置義務の対象であるにもかかわらず、設置していないというケースもあります。

火災通報装置の設置義務については、消防点検の専門家や所轄の消防署、さらには行政担当者と綿密な打ち合わせをおこなうようにしてください。

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