消防点検コラム

消防用設備

2023.01.27

消防法でよく聞く「区画」とは?「令8区画」も解説

防火区画は以下4つの種類があります。消防法や消防点検などに触れていると必ずと言っていいほど「区画」という言葉を耳にすると思います。

 

区画は「防火区画」を省略した略語として使われていますが、その定義や規定は非常に複雑なものです。

 

この記事では、消防点検などに備えてぜひとも知っておきたい「区画」について、消防法の規定をもとにしてわかりやすく解説します。

 

防火区画とは

「区画(くかく)」または「防火区画(ぼうかくかく)」とは、火災発生時に炎や煙による被害を拡大させないことを目的に、建築物を一定の基準で区切ることです。

 

防火区画は火災による被害を拡大させないために「壁・床・防火設備」の3つを組み合わせることで機能させることが基本になっています。

 

防火区画は消防法ではなく、建築基準法施工令第112条によって細かく規定されています。例えば、防火区画は燃えにくい準耐火構造もしくは耐火構造の素材を用いた壁や床であることや、防火扉などで区切る、さらには火災が発生しても1時間は変形や溶解といった破損が生じないことといった条件があります。

 

防火区画には面積区画、高層区画、竪穴区画、そして異種用途区画の4つの種類があります。詳しくは以下で解説します。

防火区画の種類

 

防火区画は以下4つの種類があります。ちなみに、以下4つの単語は建築基準法の本文では使われていないので注意してください。

・面積区画
・高層区画
・竪穴区画
・異種用途区画

面積区画

 

防火区画の種類の代表的なものが「面積区画(めんせきくかく)」です。面積区画とは、主に水平方向に火災が広がることを防ぐために一定の面積で区切る区画を指しています。

 

延床面積や耐火建築物の構造といった条件によって細かく規定されています。

 

参考:建築基準法施工令第112条第1項から第4項

 

高層区画

 

防火区画の種類2つ目が「高層区画(こうそうくかく)」です。高層区画は、11階建て以上の高層建築物に適用され、火災時にはしご車等による消火活動が難しい建物で原則として設置しなければいけません。

 

高層区画の場合、区画面積がより狭く制限され、はしご車等による消火活動ができなくても火災被害を抑えられるように規定されます。

 

参考:建築基準法施工令第112条第5項から第8項

 

竪穴区画

 

防火区画3つ目の種類が「竪穴(たてあな)区画」です。竪穴区画は、階段やエレベーター、吹き抜けといった構造部で、炎や煙が階をまたいで広がりやすい部分に設ける区画のことです。

 

主要構造部分が耐火構造または準耐火構造の地階、3階以上に居室がある建築物などの場合は原則として竪穴区画を設ける必要があります。

 

参考:建築基準法施工令第112条第9項

 

異種用途区画

 

防火区画4つ目の種類が「異種用途区画(いしゅようとくかく)」です。異種用途区画は、建築物の一部が、建築基準法27条が定める一定の規模と用途に該当する場合において、他の用途との間に防火上有効な区画を設けることです。

 

建物内に住居やオフィス、店舗、さらには劇場といった用途が混在している複合施設のような場合、それぞれで火災発生の条件や消防設備が異なります。

 

この結果、火災に対応する基準や設備も異なるため混乱が予想されます。万が一の時に混乱を防ぐ目的で、異種用途の間に区画を設けるように定められています。

 

参考:建築基準法施工令第112条第18項

 

防火区画を設ける理由

 

防火区画を設ける必要がある理由としては、火災発生時に被害を最小限にとどめることが第一に挙げられます。

 

この他の理由として、様々な種類のテナントが入り混じる大型複合施設などでは、建物全体をひとつの消防法に適用させるのは現実的ではないため、あえて区画を設けることで「別の防火対象物」とみなす目的もあります。(同じ建物内でも区画部分は別の建物とみなす)

 

具体的には、10階建てビルの1階にはコンビニとクリニックがあり、2階以上はオフィスだとした場合、1階と2階部分に「区画壁」を設けることで、1階と2~10階を別の防火対象物としてみなすことができる訳です。

 

同じ建物内であっても別の防火対象物とみなすことで、消防設備の設置条件も変わります。この結果、消防設備にかかるコストや建物の間取り、用途といったことに柔軟性が生まれるメリットがあります。

 

このような使い方は「令8区画(れいはちくかく)」と呼ばれる消防法に基づいており、令8区画については以下で詳しく解説します。

 

参考:建築基準法施工令第112条

 

令8区画とは

 

令8区画とは、消防法施行令第8条で規定されている防火区画のことです。「施行令の8条で規定される区画」ということから省略して「令8区画」と呼ばれるようになりました。

 

令8区画に該当する場合、区画を隔てた部分は「別の防火対象物」としてみなされます。令8区画の条文は以下の通りです。

 

“防火対象物が開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。”

 

引用:消防法施行令第8条

 

先述したように、同じ建物内であっても区画を設けることで別の防火対象物としてみなされることから、消防法で定められている消防設備の設置条件が緩和されることがあります。

 

令8区画に基づいた区画を設けることは、火災発生時の被害を建物の一部で食い止めることができると同時に、消防設備の設置条件の緩和や、それに付随するコストが抑えられるメリットもあり、とりわけ大型ビルや複合用途の建物では、令8区画に沿った設計がなされています。

 

一方、令8区画に適用するかどうかについては、区画の構造や耐火性といった厳しい規定や諸条件があるため、建築基準法と消防法を合わせてよく理解しておかなければいけません。

 

令8区画の構造

 

令8区画の構造は以下のような規定があります。

・鉄筋コンクリート造(RC)、鉄筋鉄骨コンクリート(SRC)、これらと同等以上の堅牢かつ容易に変更できない耐火構造であること
・火災時の加熱に耐えられる時間が2時間以上の耐火性能を有すること
・令8区画の床や壁の両端または上部は、防火対象物の外壁綿または屋根面から50センチメートル以上突き出していること
・令8区画を設けた部分の外壁面または屋根面が令8区画を含む幅3.6メートル以上に渡って耐火構造であり、なおかつ開口部がない場合
・開口部がある場合で令8区画を介して90センチメートル以上離れており、なおかつ開口部が防火戸のもの

令8区画における配管および貫通部の処理

 

令8区画では配管等が貫通することは認められていません。しかし、必要不可欠と判断される給排水管といった配管は例外です。

 

また、配管に関する処理については管の種類や直径、工法などが定められています。配管を貫通させる際に、開口部がない耐火構造として認められるには以下の条件を満たしている必要があります。

・認められるのは原則として給水配管のみ(付属する通気管を含む)
・鋼管、鋳鉄管、繊維強化モルタルなどで外装を被覆した塩ビ管(外装被覆のない塩ビ管は不可)
・配管の呼び径は200ミリメートル以下
・令8区画に設ける穴の直径は300ミリメートル以下
・令8区画に設ける穴相互の離隔距離は、貫通する穴の直径が大きい方の距離以上を確保すること
・配管および貫通部は火災時の加熱に2時間以上耐えられる性能を有すること
・貫通部はモルタル等の不燃材料を使い、気密性を完全に確保できるように施行すること
・熱伝導で配管表面に可燃物が接触した場合に発火するような場合に備え、可燃物が配管の表面に接触しないよう措置をとること

令8区画の消防設備設置

 

ここまでで、令8区画を設けることで「別の防火対象物」となることがわかったと思います。同じビル内であったとしても、令8区画が適用されれば、その区画については別の建物としてみなされる訳です。

 

これにより、消防設備の設置条件もそれぞれの区画で適用されることになります。消防設備の設置条件は建物の用途や延床面積で決まることが多いため、区画によっては消防設備が不要になるケースも生じます。

 

消防設備の設置はなくてはならないことではありますが、適切かつ簡素に設置することで思わぬ誤作動や混乱を最小限に防ぐことも求められます。

 

区画は火災による被害を一定の場所だけで留めることが目的ですが、条件を満たすことで消防設備の設置を簡略化できる一面があることを覚えておきましょう。

 

令8区画かどうかの見分け方

 

既存の建物内の区画が令8区画に該当しているかどうかは、電気の引き込みによって見分けがつきます。

 

一般的に、複合用途の建物の場合、電気配線は電柱や埋設部分を通って建物内に引き込まれたうえで、建物内の各区画へ分配されます。

 

しかし、令8区画の場合、電気配線は分配されることなく、直接引き込まれるはずです。これにより、該当区画が令8区画かどうかを判断できます。

 

電気配線による見分け方は、あくまでもひとつの目安ですので、より確実に見分ける場合は所轄の消防署や行政に確認しましょう。

 

まとめ

 

防火区画すなわち区画は、火災発生時の被害を最小限に食い止めるために設けられる部分を指しています。

 

防火区画は4種類あり、それぞれ建物の用途や面積さらには階数によって適用される条件も変わります。

 

建築基準法だけでなく消防法、そしてあなたがお住いの行政が定める条例も考慮せねばならず、知識だけで区画を理解することは難しいでしょう。

 

消防点検で指摘や指導を受けることがないようにするためにも、区画の基準や適用具合については専門家のアドバイスを受けるようにしてください。

 

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