消防点検コラム

消防用設備

2022.12.22

消防設備工事の種類や特徴について解説

 消防設備とは、消防法やその関係政令で規定する「消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設」の総称です。

ひと言で「消防設備工事」と言っても、その種類や工事方法は様々で、なおかつ目的や設置義務なども変わります。

 

この記事では、当たり前のように使用されているものの色々と不透明なことも多い「消防設備工事」について初心者にもわかりやすく解説します。

消防設備工事とは?

 

消防設備工事とは、消防法や建築基準法に基づいて実施される消防設備の設置または更新を目的にした工事のことです。

 

また、消防用設備を設置するにあたり付随した工事、例えば壁や天井の穴あけや、天井裏の配線敷設、標識の貼り付けなども消防設備工事に含まれます。

 

消防設備工事の内容は非常に多岐にわたります。具体的には、火災 報知 器設備工事やスプリンクラー設備工事など比較的身近なものから、防火防炎シャッター設置工事や動力消防ポンプ設置工事といった建物を建設する段階で実施される大がかりなものなどがあります。

 

つまり、消防設備工事は建物を建設する前の段階から入念な準備を経て計画されるものであり、その計画は消防法や管轄の消防署または各市町村の条例に沿って立てられなければいけないものなのです。

 

基本的に消防設備工事は「建物の建設時」に実施されますが、定期的な点検の結果、修理や交換を要するような場合はその都度対応しなければいけません。

 

このような場合は「更新工事」などと表現される場合もありますが「消防設備工事」として一括りにされているのが実情です。

 

消防設備工事と消防設備点検の違い

 

消防設備工事に似たものとして「消防設備点検」があります。消防設備工事は、消防設備の設置や交換であるのに対し、消防設備点検はあくまでも消防設備に関する不具合の有無であったり、正常な動作確認をしたりすることを目的にしたものという明確な違いがあります。

 

これを裏付けるように、消防設備工事と消防設備点検は「国家資格」上で明確に区分されています。

 

具体的には、消防設備士の「甲種」と「乙種」の違いです。そもそも消防設備士とは、消防設備の点検や整備が出来る国家資格ですが、甲種と乙種によって「消防設備工事が出来るか否か」が分けられています。

・消防設備士甲種:消防設備の点検、設置、交換工事が出来る
・消防設備士乙種:消防設備の点検、整備が出来る
つまり、消防設備工事は「消防設備士の甲種」だけが出来ると言えます。事実、消防設備士の甲種は資格取得にあたり、学歴(特定の学科を修了していること)や実務経験などが問われます。(乙種には受験資格や制限はない)

 

消防設備工事と消防設備点検は似ているようですが、国家資格によって明確に区分されていることを覚えておきましょう。

 

消防設備工事をする時期

 

消防設備工事は、基本的には「建物の建設時」に実施されます。一方で、建物が使われ始めてから実施されるケースも多々あります。

 

消防設備工事が実施される時期や機会としては以下のようなものが挙げらるので、知っておくとよいでしょう。

・建物を建設するとき
・消防設備点検の結果、消防設備に不具合や故障が見つかったとき
・消防設備の耐用年数や寿命を迎えたとき
・建物の増築やリフォーム等により、消防法の基準に適用しなくなったとき
・建物の用途が変更され、消防法の基準に適用しなくなったとき
・消防法の改正により、消防設備の追加が必要になったとき
・消防法の改正により、既存の消防設備が型式失効になったとき
・管轄の消防署や行政により指導を受けたとき など
このように、消防設備工事は建物の建設段階から使用段階まで継続的に実施される可能性があります。

 

消防設備工事は、法律で義務付けられている「6ヶ月に一度の消防設備点検」毎に生じる可能性もあることを把握しておきましょう。

 

参考:消防用設備等の定期点検について 消防庁

消防設備の耐用年数

 

消防設備工事は、原則として建物の建設時に実施されれば、後はあまり実施されることはありません。

 

しかしながら、最低でも10年に1度は消防設備工事が必要になると考えておいた方がよいでしょう。

 

その理由が「消防用設備の耐用年数(寿命)」です。例えば、ビルの各部屋や廊下の天井に設置されている火災感知器(煙感知器や熱感知器等)は、多くのメーカーが指定している製品耐用年数が10年とされています。

 

また、我々にとって身近な「消火器」の耐用年数も10年です。消火器は「交換」で済むため、基本的には工事を必要としませんが、同時期に設置された消防用設備と一緒に工事や交換が実施されると思わぬ追加コストになるかもしれません。また家庭用として簡易消火用具は3年を目安としています。他にも水槽、乾燥砂等があります。

 

従って、消防設備工事はどんなに長くても最低「10年に1度」は必要になると考えてください。

 

ちなみに、火災感知器や消火器等の消火設備は耐用年数を超えていても継続して使用することは可能ですが、動作や機能を確認するための追加試験が加わることを覚えておきましょう。

 

消防点検の際に不要な指導を受けないためにも、消火設備は耐用年数に合わせて更新または交換することをおすすめします。

消防設備工事の種類

 

消防設備工事には主に以下のようなものがあります。

・消火栓設置工事
・スプリンクラー設置工事
・動力消防ポンプ設置工事
・自動火災報知設備工事
・非常警報設備工事
・避難はしご・救助袋・緩降機設置工事
・各種センサー設置工事
・防排煙設備工事
・誘導灯設備工事
・消火器設置工事
上記それぞれについて工事の特徴などを解説します。

 

また、この他にも消火設備(水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備など)、警報設備(ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、住戸用自動火災報知設備など)、防災設備、消火活動上必要な施設として連結送水管、加圧防排煙設備、共同住宅用非常コンセント設備などがあります。

消火栓設置工事

 

消火栓設置工事とは、火災発生時に消火用水を供給するための設備を設置する工事です。屋内消火栓と屋外消火栓があり、屋外消火栓は地下式または地上式、さらには器具格納式消火栓などがあります。

 

設置基準に沿って消火栓と水源を結ぶ必要があるため、とても大がかりな工事と言えます。工事の条件によって大幅に変動するものの、工事にかかる費用は数百万円とされています。

 

スプリンクラー設置工事

 

スプリンクラー設備設置工事とは、火災発生時に自動的に散水するスプリンクラーを設置するための工事です。

 

天井裏にスプリンクラー用の配管を設置する必要があり、大がかりな工事になります。建物の構造や用途によって設置すべきスプリンクラーヘッドの個数や配管が変わるため、数百万円規模の費用がかかります。

 

動力消防ポンプ設置工事

 

動力消防ポンプ設置工事とは、消火用水を動力によって汲み上げるための設備を設置するための工事です。

 

動力消防ポンプは屋内消火栓の代わりに設置することもあります。警戒範囲をカバー出来る程度の性能があるポンプを設置するだけですが、水源との連結や水源確保なども考慮するため、大がかりな工事になってしまいます。

 

自動火災報知機設備工事

 

自動火災報知設備工事とは、感知器や受信機、非常ベル、手動式サイレン、表示灯など、消防機関へ通報する自動火災報知器を設置するための工事です。

 

感知器の設置をはじめ、電気配線や制御盤の埋め込み等が必要になる大がかりな工事です。大型の建物になるほど複雑になり、費用もかさみます。

 

昨今は、無線式も流通していますが、定期的なバッテリー交換などの工事が必要になります。

 

避難はしご・救助袋・緩降機設置工事

 

避難はしご・救助袋・緩降機設置工事とは、非常時に使用するための避難はしご、すべり台、避難橋等を設置するための工事です。

 

建物の構造等によっては、ハッチ付避難梯子や吊り下げ式避難はしご、緩降機などを設置しますが、消防法の基準に沿って設置しなければいけません。

 

一般的には数万円から数十万円程度の費用がかかり、1992年以前の物だと鉄製のため交換工事を要する可能性があります。

 

防排煙設備工事

 

防排煙設備工事とは、火災発生時の煙を外部へ逃がす、または閉じ込めるための設備工事です。

 

自然排煙設備と機械排煙設備の2つに大きく区分されており、一般的には天井部の窓(ラッチ)や防火扉、そして防火防炎シャッター等が該当します。

 

自然排煙設備工事であれば数万円から数十万円で済むことが多いものの、機械排煙設備は数百万円から数千万円のコストがかかります。

 

誘導灯設備工事

 

誘導灯設備工事とは、避難口誘導灯や通路誘導灯を設置するための工事です。電気配線や床面の明るさを確保するといった工程が必要になるものの、数万円から数十万円のコストが主流とされています。

 

また、停電時でも機能するように非常電源装置の設置や更新が必要になる場合もあります。

 

消火器設置工事

 

消火器設置工事とは、消火器を設置するための工事のことです。消火器はただ置いておくという訳にはいかず、消火器がある場所を示す標識の貼り付けや、消火器取付フックなどの設置も必要です。

 

工事にかかるコストは1本あたり数千円から数万円ですが、消火器本体の交換を含む場合はさらにコストがかさむと考えてよいでしょう。

 

消防設備工事の流れ

 

消防設備工事は一般的には以下のような流れに沿って実施されます。

1.問い合わせ
2.打ち合わせおよび現場視察
3.見積および契約
4.管轄の消防署へ工事着工届の提出
5.消防設備工事
6.消防書類の提出および消防検査
6.支払い
消防設備工事は、建築一式工事や鋼構造物工事、さらには機械器具設置工事とは異なり「消防検査」に合格して初めて成立することが特徴です。

 

消防設備工事を終えたとしても、管轄の消防署による消防検査に合格しなければ再工事になる可能性があります。

 

そのため、いかなる消防設備工事であっても、打ち合わせの段階で所轄の消防署によるアドバイスを受けることが大切です。

 

まとめ

 

消防設備工事は様々な種類があります。いずれの工事も消防法や建築基準法に基づいて、規定を満たす必要があることから、専門家の知識が欠かせません。

 

消防点検の際に指導を受けないようにするためにも、経験や実績がある専門家に見てもらうようにしましょう。

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