消防点検コラム

消防用設備

2022.11.28

消防用の「補助散水栓」とは?消火栓との違いや使い方を解説

消火用設備や消防法などについて勉強していると「補助散水栓」という言葉を目にすることがあると思います。

 

さらに「補助散水栓はスプリンクラー設備のひとつ」と聞いて、少し混乱する人もいるかもしれません。

 

他にも、補助散水栓の写真を見て「消火栓と何が違うの?」と疑問に思う人もいるでしょう。そこで、この記事では何かと勘違いしやすい「補助散水栓」について解説します。

 

補助散水栓と屋内消火栓との違いや、消防法で定められている規定、さらには片付け片なども紹介します。

 

補助散水栓とは

 

補助散水栓とは、スプリンクラー設備のひとつで、スプリンクラーヘッドの未警戒エリアに対して備えるための消防用設備のことです。

 

補助散水栓はスプリンクラーヘッドで警戒できないエリアにおける屋内消火栓設備の代替として設置されます。

 

補助散水栓は省略して「散水栓」や「消火用散水栓」と表現されることもありますが、同じ物を指しています。

 

補助散水栓は、建物の壁に取り付けられている「消火用散水栓」と書かれた白い箱(補助散水栓箱)の中に入っており、ホースとノズル、そして開閉弁が付いています。

 

これとほとんど同じ物が「2号消火栓」です。2号消火栓もホースとノズル、開閉弁で構成されており、非常時にひとりでも容易に消火活動が出来るようになっています。

 

つまり、補助散水栓は2号消火栓とほとんど同じと言えますが、起動方法や給水方法が異なります。

 

2号消火栓を使う場合「ポンプの起動」が行われるのに対し、補助散水栓は開閉弁を開くだけで消火用水が出る仕組みになっています。

 

なぜかと言うと、補助散水栓はスプリンクラーの配管と繋がっているからです。スプリンクラーの配管内には加圧されている状態の消火用水が入っているため、補助散水栓の開閉弁およびノズルを開くだけで勢いよく消火用水が飛び出します。

 

一方、2号消火栓の場合は、ポンプを始動することで加圧された消火用水を汲み上げて供給するイメージです。

 

ただし、補助散水栓も2号消火栓も非常時には瞬時に稼働するため、消火作業の体感速度はほとんど変わらないでしょう。

 

補助散水栓の場合「消火用水の供給方法」がスプリンクラー設備と兼用になっていることから、補助散水栓はスプリンクラー設備のひとつと定義されているのです。

 

また、補助散水栓と2号消火栓(屋内消火栓)はいずれも設備としての見た目がほとんど一緒であることから「どこが違うの?」と疑問に感じる人が多いようです。

 

ちなみに、スプリンクラーが設置されている建物内には「補助散水栓」があると考えてよいでしょう。(逆もまた然り)

補助散水栓の規定

 

次に、補助散水栓に定められている規定について解説します。

 

使い方

 

補助散水栓の使い方および使用手順は以下の通りです。以下の手順は「2号消火栓」でも同じですので、合わせて覚えておくと役に立つでしょう。
1.補助散水栓が収納されている箱(補助散水栓箱)の扉を開ける
2.開閉弁を開ける
3.ホースを取り出して火元に向かう
4.ノズルバルブを開いて放水を開始する
上記作業は「ひとりで対応可能」です。消火栓の作業はふたり必要と聞いたことがあるかもしれませんが、ふたり必要なのは「1号消火栓」のみとなります。

 

警戒範囲

 

補助散水栓の警戒範囲は「ホース接続口から水平距離15メートル以下」です。そして、放水距離10メートルを考慮する必要があります。

 

ホースの長さ

 

補助散水栓のホースの長さは20メートルです。

 

ホースの形状

 

補助散水栓のホースは「保型ホース」と呼ばれる形状記憶型のホースが使用されています。これにより、使用時にねじれたり、絡まったりすることがなく、非常時であっても落ち着いてひとりで操作できるよう配慮されています。

 

ホースの耐用年数

 

補助散水栓に使われるホースの耐用年数は製造年を起点にして概ね10年とされています。10年を経過した場合は、性能を確認するための耐圧試験をクリアせねばならず、その後も3年毎に耐圧試験を受ける必要があります。

 

10年を超えたホースは、必ずしも買い替える必要はありません。定期的に耐圧試験を受けて問題なければそのまま使い続けられることを覚えておきましょう。

 

ホースの老朽化が考えられる環境としては、湿気が多い場所や、海の近くの建物などが挙げられますので注意してください。

 

設置基準

 

補助散水栓は防火対象物の各階において、スプリンクラーヘッドで警戒できない部分からホース接続口までの水平距離が15メートル以下になるよう設置しなければいけません。

 

また、補助散水栓の設置にあたっては以下のようなことも定められています。

・補助散水栓箱には「消火用散水栓」と表示すること
・取り付け面と15度以上の角度に10メートル離れていても容易に識別できる赤色の灯火を付ける
・補助散水栓の開閉弁は床面から高さ1.5メートル以下に付ける

放水圧力

 

補助散水栓の放水圧力は「0.25MPaから1.0MPa」です。また、1分間に60リットル以上の放水能力が求められます。

 

参考:スプリンクラー設備の水源の水量等第十三条の六 消防法施行規則

 

補助散水栓と屋内消火栓の違い

 

次に、勘違いしやすい「屋内消火栓」との違いについて解説します。補助散水栓と屋内消火栓の違いを知っておくと万が一の時にも役立ちます。

 

補助散水栓

 

先述したように、補助散水栓はスプリンクラー設備のひとつで、ホース、ノズル、開閉弁で構成されている消防用設備です。

 

スプリンクラーヘッドで警戒できない部分に備えることが目的で、天井裏にあるスプリンクラーの配管から消火用水を供給します。

 

つまり、補助散水栓は消火用水の供給元がスプリンクラーの配管から分岐したものであるのに対し、後述する屋内消火栓は原則として専用配管から供給される違いが生じます。

 

補助散水栓の外観は「2号消火栓」とほとんど同じであることから、違いが分かりにくいとされがちです。

 

大きく違う点としては「スプリンクラー設備のひとつ」であること、そして「スプリンクラーの配管から消火用水を供給すること」と知っておくとよいでしょう。

 

屋内消火栓

 

屋内消火栓(おくないしょうかせん)は、建物内部に設置されている初期消火を目的にした消防用設備のことです。

 

補助散水栓はスプリンクラー設備のひとつであるのに対し、屋内消火栓は水源、消火ポンプ、非常用電源、そして消火栓起動装置などで構成されています。

 

屋内消火栓の設置については様々な条件が定められていますが、主に以下の種類があります。

・1号消火栓
・易操作性1号消火栓
・2号消火栓
・広範囲型2号消火栓
これらの主な違いとしては、有効保護範囲、水量、放水圧力、そして操作性などが挙げられます。

 

「1号消火栓」については、必ず二人以上(ホースを持つ者とノズルを構える者)で操作することが求められており、消火活動にあたり訓練や技術が必要になります。

 

1号消火栓をより簡便な物にしたのが「易操作性1号消火栓」です。放水量が少なく、さらに簡単に消火活動が出来るようにした物が「2号消火栓」です。

 

1号消火栓と2号消火栓の中間として扱われているのが「広範囲型2号消火栓」ですが、まだまだ設置状況は少ないとされています。

 

屋内消火栓とりわけ1号消火用水については、消火ポンプによる圧力がかかった消火用水を多く供給できることから、消火性能が高いと言えます。

 

したがって、屋内消火栓は補助散水栓よりも消火性能に優れていることが両者の違いのひとつと考えてよいでしょう。

 

補助散水栓を使った消火活動が終わった後は

 

補助散水栓を使った消火活動が終わった後、元通りにする手順を解説します。以下の手順は補助散水栓だけでなく屋内消火栓にも流用できるため、覚えておくと便利です。
1,ノズルを閉める
2.開閉弁を閉める
3.ホースを収納する
4.補助散水栓箱の蓋を閉める
補助散水栓を片付ける際、最も大変なのは「ホースの収納」でしょう。補助散水栓箱内に折り畳むようにしてカーテン式に収納する物や、リールで巻き取るようにして収納される物などがあります。

 

訓練の後などで片付ける時には、万が一に備えて元にあったように戻すようにしましょう。ホースが上手く収納できないからといって、大雑把に収納していると法令点検の際にチェックされてしまいます。

 

また、収納時に合わせて認識しておきたいこととして「放水後のスプリンクラー配管内の圧力」があります。

 

仮に、補助散水栓で放水をした場合、その消防用水はスプリンクラー配管から供給されたということです。

 

つまり、スプリンクラー配管内から圧力がかかった水が減ったことを意味します。このままでは、非常時にスプリンクラーから勢いよく水が出てこなくなりますが、補助散水栓箱の中にある開閉弁を閉めることによってスプリンクラー配管内部の圧力が自動的に元の水準に戻る仕組みになっています。

 

したがって、補助散水栓を使用した後は「開閉弁」を閉めることを忘れてはいけません。閉め忘れると、非常時にスプリンクラーが本来の機能を果たさなくなってしまいます。

 

補助散水栓はスプリンクラーと機能面でも連動していることを覚えておくとよいでしょう。

 

まとめ

 

補助散水栓とはスプリンクラー設備のひとつであることが分かったと思います。補助散水栓は2号消火栓と見た目がほとんど同じため、消防法について勉強している時にいったい何が違うのか混乱しやすいポイントです。

 

補助散水栓と屋内消火栓の違いとしては、消火用水の供給元、さらには消火能力があると覚えておきましょう。

 

万が一の時に備えて「補助散水栓」と「屋内消火栓」の役割を適切に理解したうえで対処できるようにしておいてください。

 

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