消防点検コラム

消防用設備

2022.10.26

非常ベルの役割と自動火災報知機設備との違いとは?

非常ベルは日常でもよく見かける防災設備のうちの1つです。

火災が発生した場合にはいち早く施設の利用者に有事であると伝えられる手段です。

そのため、設置に明確な基準があったり、建物の規模感により鳴動方式に違いがあったりします。

迅速な避難のためにも重要な要素であるのが非常ベルです。

今回はそんな非常ベルについて詳しく解説します。

そもそも非常ベルとは?

非常ベルとは非常警報設備のうちの1つで自動火災報知機設備の作動に連動したり、放送設備を手動で作動させた場合に警報を鳴らすためのものです。

自動火災報知機と非常警報装置は火災のための設備ということは同じですが設置されている役割が異なります。

非常ベルについて知るためには非常警報装置や自動火災報知機設備についても知っておく必要があります。

非常警報装置について

非常警報設備とは非常ベル・自動式サイレン・放送設備を総称する言葉で、収容人数が、50人以上または、地階・無窓階(窓があっても容易に出入りができない場合は無窓階です)では、放送設備の設置が義務付けられています。

非常警報装置が作動する流れを簡単に説明すると、火災が発生し、火災感知器や発信機が火災の信号を送信。

するとその信号が非常警報装置にも送られ、非常ベルやサイレンが作動します。

 

つまり、火災報知器があるだけでは警報は鳴らず、避難が満足に開始されない危険性があるんです。

そのため非常警報装置と自動火災報知機は密接な関係にあります。

自動火災報知機設備との違い

上記でもお伝えした通り火災報知器は火災を検知できる火災感知器が接続されています。

今この記事を室内でご覧の方は、上を見上げるとおそらく手のひら大の丸い物体があるかと思います。

それが火災感知器です。詳細な形や解説は別途記事を制作していますので気になる方はそちらもご確認いただけたら幸いです。

非常警報装置にはその火災感知器が組み込まれていません。

この感知器があるかないかが設備の違いです。

とは言っても自動火災報知機設備の中に自動式サイレンが組み込まれているものもあるので

非常警報設備が不要になるケースもあります。

ちなみに、どちらの設備も手動で作動できる押しボタンが付属しており、外見上の見た目はそっくりですが、中身の仕組みがまるで異なります。

近年では非常警報設備と自動火災報知機の見た目が同一のこともありますが、その場合は火災受信機の有無で判別することが可能です。

2種類ある非常ベルの鳴動方式

自動火災報知機設備が作動すると、非常ベルが鳴動します。

非常ベルの鳴動方式には「一斉鳴動」「区分鳴動」の2種類があります。

一斉鳴動とは?

一斉鳴動とは防火対象物に設置してある非常ベルが一斉に鳴る方式です。

小規模の建物の場合は一斉鳴動方式を採用しています。

区分鳴動とは?

区分鳴動とは初期鳴動のエリアを限定して一定時間が経過すると一斉鳴動に切り替わる方式です。

一斉鳴動に切り替わるタイミングは

・一定時間が経過した場合(最大10分以内)

・新たな火災信号が受信された場合(異なる警戒区域から火災信号を受け取った場合)

・発信機が押された場合

などです。

 

区分鳴動で鳴るエリアは火災信号を受信したエリアとその直上階です。

区分鳴動方式を採用できる条件は『地階を除く階が5以上・延べ面積3,000㎡を超える』場合となっており中規模以上の建物のみで利用できる方式となっています。

これは大きな建物で全館鳴動を採用すると余計に混乱を招き、スムーズな避難が行えなくなる可能性があるためです。

大きな建物では全館すぐに火災の影響があるとは考えづらく、パニックになる可能性もあるので区分鳴動が採用されています。

 

直上階とは?

直上階とは火災が発生している階の上の階のことです。

しかし注意が必要なのが1階と地下の場合です。

地下は地上階と比較して危険度が上がります。

そのため地下で火災信号を受信した場合は上下関係なく地下すべてと1階が直上階と判定されるんです。

たとえば地下3階、地上階が5階ある建物の地下3階で火災が発生した場合、地下1、2、3階と1階の非常ベルが最初に鳴ります。

 

非常ベルの誤作動の原因と止め方

非常ベルが鳴っているということはどこかで火災が発生しているということです。

しかし状況を確認してみても、どこにも火災が発生していない…。

これが非常ベルの誤作動なのですが、タバコの煙や雨漏り、経年劣化などにより誤ってベルが鳴ってしまうことがあります。

ここでは誤作動の原因とその対策方法について解説いたします。

誤作動の原因

非常ベルは火災以外の要因により誤作動することがあります。

よくあるケースとしては以下が挙げられます。

 

1.雨や水道管等からの水滴が感知器に入り込み、電気回路がショート

電気回路に不具合が発生している場合は、本当に火災が発生した場合にうまく機能しない可能性もありますのでしっかりと交換や点検などの対応をしましょう。

2虫やたばこの煙に感知器が反応。

感知器には煙に対して反応するタイプと熱を感知するタイプがあります。

もし調理やタバコの煙に対して反応してしまっている場合は、使用場所に対してふさわしい感知器が設置されていない可能性が考えられます。

感知器には種類がたくさんありますので、使用場所にふさわしいものかどうかしっかりと調査する必要があるかもしれません。

 

3.いたずら等で「発信機」のボタンが押される

いたずらをされないように対策してもまた新しい方法でいたずらされてしまいいたちごっこになってしまうケースもありますが、どうしていたずらが発生するのかの原因を調査することは意外と重要です。

案外シンプルな理由でいたずらされているかもしれません。簡単に諦めずに多角的に検証してみてください。

 

誤作動だからといって放置しておくと、本当に火事の際に対応するのが遅れます。

火災発生時には迅速な避難と初期消火活動が重要です。

誤作動の原因は施設の保守をしている会社さんなどが対応してくれます。

万が一の際に自分や施設を利用している人を守るためにも誤作動を放置しておくのはやめましょう。

 

誤作動時のアラーム音を止めたい!

非常ベルがずっと鳴っている!でも火災が発生しているわけではないのは確認した!

そんなときは誤作動ですのでアラーム音を止める必要があります。

受信器を操作することで音が止まります。

受信器の「地区音響停止」「主音響停止」というボタンを押してください。

受信器はおおよそ「パナソニック」「ニッタン」「能美防災」「ホーチキ」の4種類に大別されます。

ボタン形状などの違いはありますが「地区音響停止」「主音響停止」に似たような名前のボタンがあるはずですのでこれを頼りにボタンを探してみてください。

 

また、製品によってボタンを長押ししたり、主音響ボタンと地区音響ボタンを同時押ししなければいけないタイプなどがありますので焦らずにいろいろ試してみてください。

受信器にある、「地区音響強制停止」というところが赤く点滅していれば音が止まっている証拠です。

 

地区音響と言うのは各エリアに設置されている発信機のこと。通路にある赤くて丸いもののことです。

 

発信機のボタンを戻す方法

先程いたずらで発信機が押された場合について言及しました。

ちなみに発信機は相当強い力でないと押すことができず、偶然ぶつかった程度では押されないような設計になっています。

この発信機のボタンは一度押されるとへこんだままになります。

パソコンのキーボードやピアノの鍵盤のように押しても戻ってきたりはしません。

 

そのためどこの発信機が押されたかは現場検証でも見つけることができます。

さてその押されたボタンの戻し方ですが、非常に簡単です。

発信機にはボタンの上部に、パカッと開くような小さな扉がついているはずです。

その扉を開け、黒い細長い棒があるのでそれを下方へ押し込んでください。

ボタンが元の状態に戻るはずです。

非常ベルの設置基準について

火災信号を受信して自動的に警報を鳴らす非常ベルは、音響装置にカテゴライズされています。

音響装置の設置にはしっかりとした基準が明言されています。

設置位置

音響効果を妨げる効果のない場所

天井

音量及び音色が他設備の音響または騒音と明確に判別できるようにする

屋上部分を遊技場・ビアガーデン等の目的で使用する場合、当該用途の使用箇所に音響装置を設ける。

カラオケボックス等を有する建物は当該カラオケボックス等の内側にベルを増設する

※当該カラオケボックス等に非常放送設備と連動して音響装置の電源を遮断する等、有効な措置を講じた場合はこの限りではない

非常ベルの点検項目

非常ベルや受信版なども定期的な消防点検が必要です。

長くなってしまうので今回は非常ベルについての点検項目に絞って紹介します。

外形

変形・破損・腐食等がないか目視にて確認。

取付状態

脱落・緩み等がなく、音響効果を妨げるものがないか目視にて確認。

音圧

音圧が正常であり、音色が他の機械などの音と区別して聞き分けられるか器具等を鳴動させて確認。

鳴動

一斉鳴動方式

 

起動装置の操作により全館の音響装置が一斉に鳴動するか確認。

 

区分鳴動方式

 

地階を除く階数が5以上で述べ面積3000㎡を超える防火対象物に設ける音響装置は区分鳴動方式にすることができる。

一定時間経過または新たな火災信号を受信した場合は自動的に全館一斉鳴動することを確認。

 

※出火階が2階以上・・・出火階とその直上階

※出火階が1階・・・地階全部と1階と2階

※出火階が地階・・・出火階と直上階とその他の地階

相互鳴動

2つ以上ある操作部などのいずれからでも音響装置を鳴動させることができる。

再鳴動

 

再鳴動機能付きの操作部等は、その機能が正常であるか確認。

 

点検項目は目視や実際に機器を稼働させての確認など多岐にわたります。

ですが、非常時における安全のための重要なものなのでしっかりと点検をしておくことが大切です。

まとめ

非常ベルは建物の規模により、鳴動方式を選択することができます。

また、誤作動が起きてしまった場合でも慌てずに、受信器の「地区音響停止」「主音響停止」ボタンを押すことで音を止めることができます。

非常の際にしっかりと音がなるように点検・整備を欠かさずにしておきましょう。

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