消防用設備
2023.09.28
消防設備を工事できる資格は?
みなさんは「消防設備の工事って資格が必要なの?」や「消防設備工事に必要な資格は何?」といったことを考えたことはありませんか?
私たちにとって身近なスプリンクラー設備や屋内消火栓といった様々な消防設備は、専門知識だけでなく、工事に伴う高い技術も必要とします。
消防設備は、万が一の時でも確実に作動することが求められるため、これらに関連する工事は有資格者が実施せねばならず、ルールが存在します。
そこでこの記事では、消防点検のプロが「消防設備の工事に関する資格」について、初心者にもわかりやすく解説します。
消防設備とは
消防設備とは、消防のために使用する設備のことで、消防用水をはじめ、消火器、スプリンクラー設備、避難はしご、さらには自動火災報知設備など、幅広い設備を含んだ総称です。
これらの消防用設備の多くは、消防法によって仕様や技術基準が規定されている他、設置工事や点検、整備などに対しても規定が存在します。
なかでも重要とされているのが設置工事です。いかなる消防用設備も、非常時に作動することはもとより、平常時に誤作動が生じないことなども考慮せねばならず、これに携わる者は専門知識と専門技術が不可欠になります。
これらの消防用設備取扱いには資格が必要で、このような厳しい規定を満たすために存在するのが「消防設備士」と呼ばれる国家資格です。消防設備士の資格は、扱えるようになる消防用設備の種類や、工事または整備までもできるようになるかによって、計8類、甲種および乙種の合計13種類に区分されています。
例えば、スプリンクラー設備や消火栓といった消防用設備の工事は「第1類甲種」、自動火災報知設備などは「第4類甲種」の資格を持っていなければ工事できません。
つまり、消防用設備の工事に関わる場合は、工事の対象となる消防用設備に関連する消防設備士の有資格者であることが必要という訳です。
様々な消防用設備の工事については、消防設備士の独占業務であるため、消防設備士でなければ行ってはならない工事なのです。
一方、すべての消防用設備が工事を伴うとは限りません。例えば、消火器は工事や整備を伴わない「交換」で対処できる消防用設備であるため、工事や整備に関連する資格は問われず「第6類乙種」という資格のみの扱いです。
消防本部及び消防署等の支部には、建築物の大規模化・複雑化等に伴い高度化・専門化する予防業務を的確に行うため、火災の予防に関する高度な知識及び技術を有する「予防技術資格者」を配置することとされています。
消防用設備の工事に関連する資格は消防設備士であり、消防設備士の資格は消防用設備の種類によって細かく区分されているということを知っておきましょう。
消防設備の工事ができる資格
消防設備の工事ができる資格は「消防設備士」です。消防設備士免状には甲種と乙種があり、甲種は工事整備対象設備等の工事・整備及び点検ができ、乙種は整備及び点検ができます。各類ことに取り扱う設備が限定されていますので、類ごとに免状が必要です。(消防設備士免状は10年ごとに書換えなければなりません。その時に新しい写真も書換え、必要があれば本籍の書換えが必要です。)
消防設備士は、取り扱えるようになる消防用設備ごと、そして工事ができるか否かによって、以下合計13種類に分類されています。
類種 | 類別 | 対象の消防用設備等 |
特類 | 甲種 | 特殊消防用設備等(従来の消防用設備等に代わり、総務大臣が当該消防用設備等と同等以上の性能があると認定した設備等) |
第1類 | 甲種と乙種 | 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、共同住宅用スプリンクラー設備 |
第2類 | 甲種と乙種 | 泡消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、特定駐車場用泡消火設備 |
第3類 | 甲種と乙種 | 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備 |
第4類 | 甲種と乙種 | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備 |
第5類 | 甲種と乙種 | 金属製避難はしご、救助袋、緩降機 |
第6類 | 乙種 | 消火器具 |
第7類 | 乙種 | 漏電火災警報器 |
消防設備士の資格を理解するには「類別」と「種別」の違いを知ることがポイントです。例えば、第1類や第6類といった「類別」は、消防用設備の種類によって合計8種類に分類されています。
これに対し「種別」は、甲種と乙種の2種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
甲種:消防用設備等の工事、点検、整備ができる資格
乙種:消防用設備等の点検、整備ができる資格
つまり、消防用設備の工事や整備をする場合は、対象となる消防用設備の類別において「甲種」の免許を持っていなければいけません。
乙種には受験資格はなく、誰でも受験することができます。一方甲種では受験資格があります。資格(甲種消防設備士の免状の交付を受けている、建築士、専門学校検定検定合格者など)または実務経験をもっていること、または大学や高校等での特定の学科を修めていることが条件です。甲種の方が難易度は高いとされています。(「他の類の消防設備士」、「電気工事士」、「電気主任技術者」、「技術士」などの資格を持つ場合、又は消防団員として5年以上勤務し消防学校で所定の教育を終了している場合は、試験の一部免除があります。詳細は試験センターホームページにてご確認ください。)
従って、消防用設備の工事に関わる場合は、対象となる消防用設備の「甲種」資格を取得することが不可欠という訳です。電気工事士や危険物取扱者などの資格を併せて取得すると消防用設備の工事ができる場所が広がります。
消防設備士でなければ行ってはならない工事
消防設備士でなければ行ってはならない主な工事および必要な資格の種類は、以下のようになります。
屋内消火栓設備:第1類甲種
スプリンクラー設備:第1類甲種
水噴霧消火設備:第1類甲種
泡消火設備:第2類甲種
不活性ガス消火設備:第3類甲種
ハロゲン化物消火設備:第3類甲種
粉末消火設備:第3類甲種
屋外消火栓設備:第1類甲種
自動火災報知設備:第4類甲種
ガス漏れ火災警報設備:第4類甲種
消防機関へ通報する火災報知設備:第4類甲種
金属製避難はしご(固定式のものに限る。):第5類甲種
救助袋:第5類甲種
緩降機:第5類甲種
なお、上記の工事については、着工前に管轄の消防署に対し、通称「着工届」と呼ばれる「工事整備対象設備等着工届」を、消防設備士の有資格者が着工10日前までに提出しなければいけません。
つまり、有資格者だからと言って勝手に工事を始めてよいとはならず、前もって消防署に届け出たうえで着工しなければいけない仕組みになっています。
この着工届の制度によって、無資格者による勝手な工事が実施されないよう、未然に防いでいる訳です。
一方、上記に該当しない工事であっても、各自治体によっては管轄の消防署に「計画届」と呼ばれる「消防用設備等設置計画届出書」の提出が求められる場合がありますので、あらかじめ確認することをおすすめします。
参考:消防法施行令第三十六条の二(消防設備士でなければ行つてはならない工事又は整備)
消防用設備における工事と整備の区分
消防用設備等の工事は、消防設備士甲種の有資格者が実施しなければいけませんが、点検や整備であれば消防設備士乙種でも可能です。
「工事」と「点検や整備」の分類は、その内容によって厳密に区分することが難しい場合もあるかもしれません。
このようなケースを想定し「工事」と「整備」は、原則として以下のように区分されていることを知っておきましょう。
「工事」に該当する作業:新設、増設、移設、取り換え、改造
「整備」に該当する作業:補修
いずれにも該当しない作業:撤去
上記のように区分されていても混乱が生じることもあります。例えば、自動火災報知設備を構成する設備のひとつである「感知器」のヘッド部分を交換する場合、上記に当てはめると「取り換え」になるため、第4類甲種の有資格者が着工届を提出したうえで実施しなければいけないと解釈できます。
しかし、感知器の老朽化や凹みといった物理的な損傷がある場合は「補修」すなわち「整備」になるため、第4類乙種の有資格者が届け出なしで対応できると解釈可能です。
加えて、所轄の消防署の見解や、担当消防員の見解によっても左右される可能性があるため、工事と整備の区分けを巡る混乱は起きても仕方がないと言えます。
このような解釈の違いによって、すぐさま罰則が下るということは考えにくいですが「消防用設備等の工事や整備の区分けは、所轄消防署の見解を仰ぐ」ことを基本的な考えにすることをおすすめします。
無資格者による工事が発覚した場合
消防用設備の工事は有資格者が着工届を提出したうえで実施するのが基本ですが、無資格者が独自に設置工事してしまった場合は、罰金刑や行政処分といった罰則の対象になります。
多くの場合、消防署にバレることはないと考えがちですが、後々必ず発覚する仕組みになっており、後々発覚する方が悪質性が高いと判断されて、罪が重くなります。
消防署は「立入検査権」と呼ばれる権利を有しており、管轄の防火対象物に対して予告なく立入検査できます。
また、建物管理者は、1年または3年に1回の頻度で消防点検の結果を書面で報告しなければいけないため、過去に遡って違反の有無を確認したり、消防設備の設置工事状況や管理状況を確認したりできます。
これにより、消防用設備の着工届の未提出や、消防点検の虚偽といった矛盾などが見つかるため、隠し通すことは実質的には不可能です。
消防設備士の資格がなくても対応できるケース
消防用設備であっても消防設備士の資格を持っていない人が整備することを「軽微な整備」と呼びます。
軽微な整備は、主に以下のようなケースが該当します。
屋内消火栓の表示灯の交換
誘導灯のバッテリーやランプの交換
ヒューズ類、ネジ類などの部品交換
屋内消火栓や屋外消火栓のホースやノズル、ネジ類等の部品交換
屋内消火栓や屋外消火栓の消火栓箱やホース格納箱などの補修
このように、消防用設備でも簡易的な措置で対応できる作業については、無資格者でも実施できることを知っておくと役に立つかもしれません。
同時に、消防用設備については、半年に1回以上の機器点検、年に1回以上の総合点検といった消防点検が義務付けられていることも忘れないでください。
まとめ
消防設備の工事ができる資格は消防設備士です。消防設備士の資格には工事ができる種別として「甲種」が設けられており、甲種資格を保有していることが絶対条件と言えます。また、関連資格では、電気工事士・危険物取扱者・ボイラー技士・第三種冷凍機械責任者があります。
消防用設備等の工事については、消防署との見解の相違や思い違いといったことも起こり得ますので、消防点検のプロに相談することをおすすめします。
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