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2023.09.28
防火対象物使用開始届を出さないとどうなる?
テナントとしてこれから建物やその一部を利用することになる人のなかには「防火対象物使用開始届って提出が義務なの?」や「防火対象物使用開始届を出さないと罰則があるの?」といった疑問を持つ人は多いと思います。
なかには「防火対象物使用開始届なんて聞いたこともない」や「防火対象物使用開始届の提出義務があることを知らなかった」という人もいるかもしれません。
防火対象物使用開始届についてしっかり理解している人は決して多くないとされていることから、消防点検のプロが初心者にもわかりやすく解説します。
防火対象物使用開始届とは
防火対象物使用開始届とは、管轄の消防署が、主に「どの建物(または建物内)を誰がどのように使用しているか」や「消防法で規定されている消防用設備等の設置状況を確認する」ことなどを目的にして使われるもので、必ず申請しなければいけない書類です。
防火対象物使用開始届は「建物またはその一部を実際に使用する者」の責任において提出する必要がありますが、行政書士や内装工事業者などが代理で手続きするケースもあります。(あくまでも代理提出であり、一切の責任は建物使用者にあるので注意)
また、その提出先となるのは「該当建物の所在地を管轄にしている消防署(消防長または消防署長)」です。昨今では、東京消防庁のように電子申請に対応しているところも多くなっているため、届出にかかる負担は軽くなっています。
防火対象物使用開始届は、添付すべき必要書類と合わせて「建物やその一部を使用する7日前まで」に届け出る必要があるため、準備期間も含めると1ヶ月くらいかかると考えてよいでしょう。
防火対象物使用開始届を届けた後の流れとしては、建物やその一部を使用し始める前に消防署による検査を受け、検査に合格すると検査済証が発行されて、消防署(消防長または消防署長)のお墨付きを得た状態で建物やその一部を使えるようになります。
ただし、防火対象物使用開始届の内容によっては検査が省略されることもあります。消防署が現地に赴くまでもない場合や、画像などによって消防用設備等の設置が確認できる場合など、消防署の判断によっては検査が簡略化されるかもしれません。
このように、防火対象物使用開始届は、管轄の消防署が防火の観点において、対象となる建物やその一部の使用状況を把握するために用いられる重要な書類です。
そして、防火対象物使用開始届は、建物使用者の責任において、使用7日前までに消防署へ提出しなければいけないと自治体の火災予防条例によって規定されています。
防火対象物使用開始届を出さないとどうなる
防火対象物使用開始届を出さないことは罰則対象になります。未提出であることが即刻罰則となる可能性は低いものの、故意に提出しなかったり、隠蔽したりするような悪質性が確認できた場合は、1億円以下の罰金、または3年以下の懲役が科せられます。
また、防火対象物使用開始届を提出したものの、実際には消火器などをはじめとする消防用設備等を設置していないことが判明した場合は、消防法違反となり、行政指導または行政処分の対象になるため、営業活動等に影響する可能性は十分にあるでしょう。
防火対象物使用開始届を巡っては、ほとんどの人が「そんな制度があることを知らなかった」や「建物のオーナーや不動産会社から何も聞いていない」と主張すると言われていますが、いかなる理由においても罰則対象になることを忘れてはいけません。
なかでも、最も悪質なケースは「消防署にバレることはない」と考えることです。消防署は、消防法第4条に基づく「立入検査権」を有しており、予告なく建物に立入検査を実施できます。
この他に、少なくとも半年に1回以上の機器点検や、1年に1回以上の総合点検といった消防点検が義務付けられており、これらの記録はその都度書面で残しておく必要があります。
つまり、消防署による立入検査などによって違反状態が発覚した場合、過去に遡って消防点検も偽装だったと判断され、より重い罰則が適用されるかもしれないのです。
抜き打ち検査であろうと、そうでなかろうと、数年に1回の頻度で消防署による立入検査を受けることになりますので、隠し通すことは不可能な仕組みになっています。
一定期間、隠せたとしても、過去の記録を振り返れば、どれだけの期間にわたって違反状態にあったかが分かりますので、消防署にバレないと考えること自体、無意味と思ってください。
参考:消防法第四条
防火対象物使用開始届を出さないことで生じるトラブル事例
防火対象物使用開始届を出さないことで生じるトラブル事例について、どのようなことがあるのかを知っておくと役に立つかもしれません。
使用者も施工者も知らなかった
「オーナーと使用者での責任問題」も防火対象物使用開始届を巡って頻繁に起きるトラブル事例のひとつです。
防火対象物使用開始届を出していないことが発覚した際、オーナーは「使用者の責任」と主張し、使用者は「オーナーにも責任があるはず」と主張しがちです。
消防用設備等の設置や、階段に避難障害となる物品が置かれていたこと、防火管理者が選任されておらず避難訓練も行われていなかったこと、消防用設備等の点検も行われていなかったことなどは消防法令違反があげられてしまいます。これらの管理維持に関する責任は、建物のオーナーにあると考えられているものの、これを嫌うオーナーが、賃貸契約の際に「防火対象物使用開始届は使用者の責任」として契約している可能性も考えられます。
トラブルが発覚した際に、オーナーまたは管理会社から「防火対象物使用開始届を出さないことに対する責任はテナント(使用者)が負うという契約にサインしてありますよ?」と主張される訳です。
オーナーと使用者での責任問題
「オーナーと使用者での責任問題」も防火対象物使用開始届を巡って頻繁に起きるトラブル事例のひとつです。
防火対象物使用開始届を出していないことが発覚した際、オーナーは「使用者の責任」と主張し、使用者は「オーナーにも責任があるはず」と主張しがちです。
一般的に、消防用設備等の設置や、これらの管理維持に関する責任は、建物のオーナーにあると考えられているものの、これを嫌うオーナーが、賃貸契約の際に「防火対象物使用開始届は使用者の責任」として契約している可能性も考えられます。
トラブルが発覚した際に、オーナーまたは管理会社から「防火対象物使用開始届を出さないことに対する責任はテナント(使用者)が負うという契約にサインしてありますよ?」と主張される訳です。
工事後の発覚による修正工事
「工事後の発覚による修正工事」も防火対象物使用開始届を出さないことで起きるトラブル事例です。
例えば、使用者も内装工事担当者いずれもが防火対象物使用開始届を提出しないまま内装工事が終わった場合、消防署による立入検査の結果、後々様々な消防用設備等の未設置が指摘されることが考えられます。
この指摘に対処するために修正工事が必要になると、その分の費用負担や、一時的な休業などを強いられる可能性を否定できません。
工事が二度手間になってしまうことや、予想外の工事コスト負担、そして営業活動に支障が生じるトラブルが後々起きる訳です。
防火対象物使用開始届の提出が必要なケース
防火対象物使用開始届を出さないことは、テナントを使用する者に責任が及びます。また、これに伴う費用や時間の負担が大きくなるため、提出しないという選択肢はないと考えましょう。
防火対象物使用開始届は、主に以下のような要件に該当する場合に提出する義務があります。
・防火対象物またはその一部を新たに使用する場合
・既存の防火対象物で工事を伴う改修をした場合
・使用形態を変更する場合
それぞれ詳しく解説します。
防火対象物またはその一部を新たに使用する場合
防火対象物使用開始届は「防火対象物またはその一部を新たに使用する場合」に出さなければいけません。
例えば、ある建物そのもの、または建物の一部を借りて、事務所や販売店などとして新たに使用する場合、使用の7日前までに消防署へ防火対象物使用開始届を提出しなければいけません。
この際、工事の有無は関係なく提出しなければいけないことに注意してください。
既存の防火対象物で工事を伴う改修をした場合
「既存の防火対象物で工事を伴う改修をした場合」も防火対象物使用開始届を提出しなければいけません。
例えば、東京都の場合、建物の一部を借りて飲食店等を始める場合は、工事を始める7日前に「防火対象物工事計画届」を提出しなければいけません。
防火対象物工事計画届は、実質的には防火対象物使用開始届と同じ内容であるため、必要書類や手続きは同じです。(表紙を変えるだけでよい)
つまり、建物やその一部を工事したうえで使用する場合、防火対象物工事計画届と防火対象物使用開始届の2つを提出することになります。
工事を伴う際は、手続きがひとつ増えることを覚えておきましょう。(自治体によって異なる)
使用形態を変更する場合
防火対象物使用開始届を出さなければいけないケースには「使用形態を変更する場合」もあります。
例えば、これまで事務所として使われてきた建物の一部を居抜き(スケルトン)にし、飲食店として使用する場合などが該当します。
建物またはその一部の「使用用途」は、防火の観点でとても大切です。このようなケースは工事を伴うでしょうから、前述したように防火対象物工事計画届と防火対象物使用開始届の2つを提出しなければいけません。
まとめ
防火対象物使用開始届を出さないことは罰則対象になります。建物やその一部を新たに使用する場合、7日前までに管轄の消防署へ届け出ることを忘れないでください。
防火対象物使用開始届を出さないことは、使用者のみならず、工事業者やオーナーも巻き込む「責任トラブル」に発展しやすいため、十分に注意しましょう。
その後、定期点検として建物のオーナー等は、防火対象物点検資格者に点検を依頼します。防火対象物点検についてはまた別のコラムで紹介します。
防火対象物使用開始届に関するトラブル回避のためにも、前もって消防点検のプロに相談することをおすすめします。
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