消火器
2023.08.29
今すぐ確認すべき消火器の型式や型式失効のルール
消火器本体には、その消火器の型式番号というものが記されています。型式番号は、一般的な製品番号のようなものとは異なり、対象となる消火器等が、消防法で規定されている検定に合格したものであることを認識するために用いられます。
一方、型式番号は失効することもあるため、いつの間にか型式番号が失効した「型式失効」の消火器を設置してしまっていたという事態も想定されます。
型式失効の消防用設備等を使用し続けることは、消防法に違反する行為になるため、とくに身近な消防用設備である消火器の型式は注意が必要です。
そこでこの記事では「消火器の型式」について、防災管理者やビル管理者がしっかり理解しておくべきポイントを中心に、消防点検のプロが初心者にもわかりやすく解説します。
消防用設備に対する検定制度とは
消火器の型式などについては、消防法第二十一条の二「検定対象機械器具等の検定」によって以下のように規定されています。
“消防の用に供する機械器具若しくは設備、消火薬剤又は防火塗料、防火液その他の防火薬品(以下「消防の用に供する機械器具等」という。)のうち、一定の形状、構造、材質、成分及び性能(以下「形状等」という。)を有しないときは火災の予防若しくは警戒、消火又は人命の救助等のために重大な支障を生ずるおそれのあるものであり、かつ、その使用状況からみて当該形状等を有することについてあらかじめ検査を受ける必要があると認められるものであつて、政令で定めるもの(以下「検定対象機械器具等」という。)については、この節に定めるところにより検定をするものとする。”
この条文を要約すると、火災発生時に使用する機械類は、人命救助等の支障が生じないよう、あらかじめ構造や性能を検査し、これに適合したものを承認するとなります。
言わば、消火器をはじめとする消防用設備の検定制度は、法律で義務化された制度であり、それぞれの消防用設備に対するお墨付きとなります。
なお、この制度は防災管理者やビル管理者が関与することはほとんどないと言え、実質的には消火器などの消防用設備を製造および販売するメーカーの範疇です。
一方、防災管理者らは、業者頼みにするのではなく、消火器をはじめとする消防用設備が型式適合検定に合格したものかどうかや型式失効になっていないかを確認することが求められます。
参考:消防法第二十一条の二
検定の対象になる消防用設備12品
消火器の型式以外にも、様々な消防用設備に対して型式認定制度が適応されます。現在では、検定対象となる消防用機械器具等として、以下12品目が対象になっています。
・消火器
・(自動火災報知設備の)感知器・発信機
・中継機
・受信機
・金属製避難はしご
・緩降機
・消火器用消火薬剤
・泡消火薬剤
・閉鎖型スプリンクラーヘッド
・流水検知装置
・一斉開放弁
・住宅用火災警報器
このように、消火器の型式以外にも、自動火災報知設備を構成する機器類、避難器具なども対象になっていることを知っておきましょう。
型式認定制度に合格しているかの見分け方
消火器の型式に限らず、前述した消防用設備等は、検定に適合した場合、検査機関によって型式番号および検定合格表示(ステッカー式)が付与されます。
消火器の場合は、消火器本体のラベルに「国家検定合格之証」と書かれた丸いステッカーが貼られます。
一般的に流通している消火器には、例外なく検定合格表示が貼られているため、気にする必要はないかもしれませんが、型式認定制度の証があることを知っておきましょう。
型式認定制度の仕組み
消火器の型式をはじめとする消防用設備等は、検定機関による2つの検定を経たうえで、流通する仕組みになっています。
検定制度は、以下2つで構成されています。
・型式承認
・型式適合検定
それぞれの内容を解説します。
型式承認
型式承認とは、消火器などの機械器具類の形状、材質、成分、性能が法で定める技術上の規格に適合しているか否かを確認することです。
検査機関と製造者の工場など、それぞれで実施され、技術仕様や製造方法などを検査したうえで、次の型式適合検定に進めるかどうかが判断されます。
型式適合検定
型式適合検定とは、製造された消火器等の機械器具類が、先に型式承認されたものの形状や性能と適合しているかを確認することです。
検査員が工場で実施する立会い検査の他、製造者による検査結果を検証するデータ審査方式があり、適合を認められれば、検定適合表示が付与されます。
消火器の型式
消火器の型式について必ず確認すべきことが「消火器の新旧規格」です。2022年1月1日を起点にして、消火器の新旧規格が一新され、旧規格の消火器は型式失効になりました。
これにより、2022年1月以降は、いかなる消火器も新規格でなければいけません。もし、旧規格の消火器を設置し続けている場合は、消防法違反そして罰則の対象になります。
消火器は日常的に動かす物ではないため、型式失効に気がつかない可能性があります。また、何らかの理由で旧規格の物が混ざってしまっているケースも想定されます。
そのため、設置している消火器が型式失効していない新規格の物であるかどうかを確認することをおすすめします。
消火器の型式を確認する方法
消火器の型式を確認する方法、ならびに新旧規格の見分け方は二通りあります。
・適応火災マーク
・型式番号
それぞれ解説します。
適応火災マーク
消火器の型式や新旧規格は「適応火災マーク」で見分けることが可能です。適応火災マークとは、消火器本体に記されている白、黄、青などのマークのことで、その消火器が適応している火災の種類を示す役割があります。
2011年、消防法に基づく「規格省令」が改正され、10年間の移行猶予期間を経て、適応火災マークのデザインが変わりました。
旧規格の適応火災マークは、マーク内に漢字で「普通火災用」や「油火災用」と書かれていましたが、新規格では漢字の代わりにイラストが描かれています。
つまり、消火器の適応火災マークに漢字が書いてある場合は旧規格、すなわち型式失効の消火器ということが分かります。
対照的に、消火器の適応火災マークに漢字ではなく、アイコンが描かれていれば、それは新規格の消火器となり、消防法で認められた物と判断可能です。
適応火災マークを使った見分け方は、消火器の設置数が少ない小規模建物などに適していますが、消火器の設置数が多い場合や、全消火器を目視確認することが大変な場合は、かえって見落としが生じる可能性があるため、注意してください。
型式番号
消火器の型式や新旧規格は「型式番号」を使って見分けることも可能です。具体的には、消火器本体のラベルに記載されている型式番号「消第○~△号」を確認し、それが新規格のものかどうかによって見分けます。
以下3つのいずれかに該当する場合は新規格、それ以外は旧規格となり、型式失効と判断できます。
・○が「23」かつ△が3桁(例:消第23~101号)
・○が「24」~「30」(例:消第24~1号)
・○が「2019」以降(例:消第2019~1号)
この見分け方は、消火器の設置数が多い大型施設などに適しています。見分ける際は、設置してある消火器の型式番号一覧などを使うとよいでしょう。
もし、消火器の型式番号リストなどが見当たらない場合は、適応火災マークを確認する方法でも対応可能です。
型式失効とは
消火器は現行の消防法で定められた基準を満たせなくなった古い物などは型式失効扱いになり、法的義務を満たす設置および使用が認められません。
型式失効の消火器リストは、随時更新されているため、設置してある消火器が型式失効の対象になっていないかどうかを確認しなければいけません。
とくに、老朽化した消火器などは型式失効の恐れがあるため、対象となる消火器の型式番号と、日本消防検定協会が公開している最新の型式失効状況を照合する必要があります。
型式失効になった型式番号が一覧化されたリストは、消火器を製造販売するメーカーの名称の五十音順です。
照会する際は、消火器のラベルに記載されているメーカー名を確認し、対象となる型式失効状況と照らし合わせてください。
ちなみに、家庭用の消火器については、型式失効による交換義務はありません。製造から5年を目安にして交換するようにしましょう。
参考:型式失効状況-消火器、日本消防検定協会
型式失効の消火器を使い続けるとどうなる?
型式失効の消火器を設置し続けることは消防法違反です。これは消防法第二十一条の五に違反することになり、まだ使える消火器であったとしても有効な消火器として認められません。
仮に、消防法の設置基準を満たす設置数であったとしても、型式失効の消火器が含まれていると、無効な消火器として扱われ、設置数不足になってしまいます。
このようなことが発覚した場合、管轄の消防署によって、消防法第十七条の四に基づいて「消防用設備等の設置維持命令」が発せられ、是正を求められます。
この命令を無視したり、忘れてしまったりすると、消防法第四十一条の五に基づいて「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられます。
消火器の新規格は、10年の猶予期間を経て導入されたものの、この規格改正を知らなかったという防災管理者や、うっかり忘れていたという人もおり、消火器に関する法令遵守の盲点になっている可能性があります。
従って、消火器の設置義務がある防火対象物の管理者は、消防点検を実施した業者任せにするのではなく、念のため確認することが望ましいでしょう。
まとめ
消火器をはじめとする消防用設備等は、消防法で定められた型式認定制度に適合した物でなければいけません。
なかでも、消火器は2022年1月から新規格に一新されていますので、設置してある消火器が型式失効になっていなかどうかを確認しましょう。
消防法違反にならないためにも、消防点検のプロに相談することをおすすめします。
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