自動試験機能付感知器
2023.06.26
自動試験機能付感知器とは?メリットや価格を解説
「自動試験機能付感知器って何?」や「自動試験機能付感知器に交換するメリットは?」といったことを考えたことがある人は多いと思います。
昨今、火災発生を感知する熱感知器や煙感知といった感知器は、自動で試験する機能が備わった物が広まりつつります。
自動試験機能付感知器を設置することで、消防点検の手間やコストが省けるとされており、多くの自治体が自動試験機能付感知器の設置を推奨するようになってきました。
そんな自動試験機能付感知器については、まだまだあまり知られていないことが多く、既存の感知から移行すべきかどうか悩む建物管理者やオーナーも多いようです。
この記事では「自動試験機能付感知器」について、具体的にどのような特徴があるのかや、メリットとデメリット、そして気になるコストなどを消防点検のプロが分かりやすく解説します。
自動試験機能付感知器とは
自動試験機能付感知器とは、熱感知器または煙感知器そのものに、自動火災報知設備に係る試験機能が備わったもののことです。(PA感知器とも呼ばれる)
実際には、各感知器と管理人室や防災センター室などに設置されている、制御盤のような役割を持つ「受信機」を組み合わせて使用することになりますが、各感知器が正常に作動しているか否かを受信機上だけで管理できるようになります。
自動試験機能付感知器でない従来型の感知器の場合、消防設備士が感知器すべてに対して煙や熱を加える「加熱・加煙試験器」を用いて動作試験をする必要がありました。
しかし、自動試験機能付感知器の場合は、感知器に何かしらの異常が生じた際に、自動的に受信機へエラーメッセージが送られるため、点検や試験における労力が大幅に削減できる訳です。
また、建物の管理者やオーナーにとっては、最低でも1年に2回の頻度で必要な消防点検のコストが抑えられる可能性が高いため、消防設備士だけでなく管理者にとっても有益とされています。
一方、自動試験機能付感知器は導入コストの負担が大きいとされていることから、まだまだ一部にしか普及が進んでいないことも事実です。
自動試験機能付感知器は、利便性やメンテナンス性が優れている反面、コストや導入の手間がかかるため、メリットとデメリットを理解することが重要と言われています。
自動試験機能付感知器の仕組み
自動試験機能付感知器がどのように作動するのか、その仕組みについて理解すると、メリットとデメリットも把握しやすくなります。
自動試験機能付感知器は、感知器すべてに対して「アドレス」と呼ばれる固有の個体識別番号が割り当てられます。
このアドレスを感知器などで構成される自動火災報知設備の制御盤と言える「受信機」で24時間365日監視します。
仮に、特定の部屋に設置してある感知器が断線して機能しない状態に陥った場合や、実際に火災が発生した可能性がある場合には、受信機上で警報音や警告灯が作動し、感知器の異常を知らせる仕組みです。
また、受信機から特定の感知器に対して試験信号を送り、個別に正常機能しているかどうかを確認する「遠隔試験」という使い方も可能になります。
感知器それぞれには個体の識別番号が割り当てられているため、エラー発生時に受信機に表示される識別番号、すなわちアドレスを読むことで、異常を起こしている感知器の特定も容易になる仕組みです。
このように、自動試験機能付感知器は受信機上で常時監視でき、いつでも容易に感知器の試験や日常的な点検ができる仕組みになっています。
自動火災報知設備のP型とR型
自動試験機能付感知器はあくまでも自動火災報知設備を構成しているひとつの設備です。自動火災報知設備は、P型とR型のふたつに大きく分けられており、P型とR型の違いを知ることで自動試験機能付感知器についても理解が深まります。
P型
自動火災報知設備のP型(Proprietary-Type)とは、従来型の自動火災報知設備のことで、感知器や発信機(非常ボタン)などの電気的な接点が閉じることで火災信号が発せられます。
P型は、R型と比較して広範囲の「区域(ゾーン)」で警戒することが特徴です。仮に、A区画で異常が発生した場合、受信機上では「A区画のどの部屋か?」といったことまでは特定できません。
このような特性から、P型は小規模から中規模の建物で用いられることがほとんどです。また、R型よりも安価であることから、P型の方が普及していると言えます。
R型
自動火災報知設備のR型(Record-Type)とは、伝送信号を用いた通信により、受信機上で感知器や発信機の特定が可能なものです。
R型は、P型よりも小範囲の「ポイント」でも警戒できることが特徴で、P型では難しい「特定区画のどの部屋で異常が起きたか」ということまでが受信機上で判断できます。
このR型の特性を活かして、主に高層ビルといった大型建築物などで採用されており、感知器には自動試験機能付感知器が用いられています。
自動試験機能付感知器のメリット
自動試験機能付感知器には主に以下のようなメリットがあります。
・消防設備点検の手間やコスト削減
・エラーや作動した感知器の特定が容易
・火災発生時の早期発見
・感知器が高所でも試験が容易
自動試験機能付感知器の大きなメリットが「消防設備点検の手間やコスト削減」でしょう。先述したように、自動試験機能付感知器の場合は、加熱・加煙試験器を使った通称「あぶり検査」が免除されます。
この結果、感知器の試験が受信機上で完結するため、消防点検時の人件費や点検費用が抑えられます。
また、6ヶ月に1回以上の頻度で消防点検を実施する度に、居住者や利用者に立ち会いなどの負担をかける必要がなくなります。
昨今では、感染症予防の観点から、室内への立ち入りを拒む声も多いことから、自動試験機能付感知器だと円滑な消防設備点検が実施しやすいと言えるでしょう。
このようなメリットや社会的な風潮を受け、多くの自治体が自動試験機能付感知器への移行を積極的に促すようになっています。
自動試験機能付感知器のデメリット
自動試験機能付感知器のデメリットは主に以下の通りです。
・導入時にコストがかかる
・従来型からの交換作業が必要
「導入時にコストがかかる」ことは自動試験機能付感知器の大きなデメリットと言えます。一般的に、自動試験機能付感知器や周辺機器等は通常の設備と比較して2倍程度高いとされていることから、コストの高さは否めません。(設置個数や配線工事など諸条件によって大きく変わる)
また、従来型の感知器から自動試験機能付感知器に切り替える際は、取替え工事が必要になるため、建物によっては大掛かりな工事になってしまうかもしれません。
とくに、商業施設や集合住宅の場合は、工事が簡単に進まない可能性があります。自動試験機能付感知器は大型建築物ほど有効とされていることから、交換工事に向けた様々な調整に苦労するケースも考えられます。
自動試験機能付感知器の価格相場
自動試験機能付熱感知器の価格相場は1個あたり10,000円から15,000円とされていますが、コストが高いのは自動試験機能付感知器に対応している「受信機」です。
先述したように、自動試験機能付感知器はそれらを制御する役割を持つ「受信機」とセットになって始めて機能します。
つまり、感知器すべてを自動試験機能付感知器に交換したとしても、肝心の受信機が旧型(P型)のままでは意味を成しません。
自動試験機能付感知器に加えて、R型の受信機あるいは自動試験機能付きのP型自動火災報知設備に切り替える必要があります。
P型は回線数や等級にもよりますが、100,000円から300,000円が相場であるのに対し、P型の自動試験機能付は定価で700,000円から800,000円と言われています。
自動試験機能付感知器に限った話ではありませんが、多くの場合、消防用設備は価格が公表されていません。
この理由は、建物の構造や工事の難易度、さらに工事にかかる時間などが建物によって異なり、一概に示せないためです。
従って、同じ内容に対して複数の業者から見積りを取ることをおすすめします。
従来型から自動試験機能付感知器に変更できるのか
従来型の感知器(熱感知器または煙感知)から自動試験機能付感知器に切り替えることは可能です。
基本的な流れとしては、自動試験機能付感知器に対し「アドレス測定器」を使って固有のアドレスを振り、後に受信機へその情報を読み込ませる(SDカードなどの記録媒体を使う)方法や、受信機の基盤を操作してアドレスを振る方法など、メーカーによって様々です。(いずれも簡単な作業)
アドレス設定、および自動試験機能付感知器の取付けが完了したら、受信機を使って遠隔試験をし、すべてが正常に警戒状態にあるかを確認します。
なお、メーカーによっては試験結果を感熱紙やパソコン用のデータとして出力できるため、これらを添付書類として管轄の消防署へ提出することが可能です。
このように、自動試験機能付感知器への移行は、原則として配線工事などは不要であることから、自動火災報知設備の新規設置よりも遥かに簡単に完了します。
自動試験機能付感知器への移行を検討している場合は、複数の業者に対して、作業内容とそれに関する費用を提示してもらうことが大切です。
まとめ
自動試験機能付感知器は、導入または交換コストこそかかりますが、6ヶ月に1回の消防設備点検時にかかる労力やコストを削減でき、なおかつ火災発生時の現場特定が容易といったことが実現します。
旧型の感知器を使用している場合は、自動試験機能付感知器に交換した際に、消防点検にかかる経費などを元にして「どれくらいの年月で交換コストを回収できるか」をシミュレーションすることをおすすめします。
その際には、消防点検のプロに相談するようにしましょう。
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