COLUMN
2023.05.31
統括防火管理者の資格について徹底解説
「統括防火管理者って何?」や「統括防火管理者はどんな資格なの?」といった疑問を持ったことがある人は多いのではないでしょうか。
統括防火管理者は、その名称の通り、防火管理者を統括する人のことで、防火対象物における防火管理の代表者と言えます。
そんな「統括防火管理者」について、制度が複雑でよく分からないという人に向けて、消防点検のプロがわかりやすく解説します。
統括防火管理者とは
統括防火管理者とは、複数の防火管理者が存在する防火対象物において、全体の防火管理業務を請け負う防火管理者の代表のことです。
最も分かりやすい例えとして、雑居ビルが挙げられます。雑居ビルでは様々な業種業態のテナントが入居しますが、各テナントで「防火管理者」を選任しなければいけません。
そうなると、ひとつのビルに対して、テナントの数だけ防火管理者が存在することになります。
このような「複数の防火管理者」を統括する存在が「統括防火管理者」という訳です。ごく簡単に言うならば、その建物の防火管理業務や責任を負うリーダーのようなものと考えるとよいでしょう。
ちなみに、統括防火管理者という資格は存在しません。あくまでも、対象となる防火対象物における防火管理者の代表者(選任された者)という位置付けです。
一方、統括防火管理者は誰でもなれる訳ではありません。統括防火管理者に選任されるために求められる資格が「防火管理者(または防火管理者講習修了者)」です。
つまり、統括防火管理者について理解するためには、防火管理者の資格についても知っておく必要があると言えます。
防火管理者の資格については、次で詳しく解説します。
統括防火管理者に求められる資格「防火管理者」とは
統括防火管理者に求められる資格である「防火管理者」とは、不特定多数の人が利用する建物において、火災等による被害を防止することを目的にした防火管理業務を、計画および実行する責任者のことです。
防災管理者の資格は国家資格ではあるものの、実質的には試験ではなく、最大2日間の防火管理講習を修了することで得られます。(防火管理者に必要な学職経験を有すれば防火管理者として認められることもある)
防火管理者の資格は、統括防火管理者として選定されるために必須という訳ではありません。しかし統括防火管理者の選任については「防火管理者や防火管理講習修了者の資格を有する者」がひとつの前提条件であることから、実質的には防火管理者の有資格者と言えます。
ちなみに、防火管理者の資格は「甲種」と「乙種」に区分されています。統括防火管理者は甲種および乙種は問われません。
甲種の防火管理者講習を修了すると、規模を問わず、すべての防火対象物において防火管理者として活動できるのに対し、乙種の防火管理者講習だけを修了した場合は、比較的小規模な建物でのみ活動可能です。
「甲種」は2日間に及ぶ、より専門的な講習を受けなければならないものの、すべての建物で有効な資格と言えます。
対照的に「乙種」は1日の講習で資格取得が可能ですが、小規模建物でのみ有効な資格となる訳です。
統括防火管理者の責務
統括防火管理者の責務として以下があります。
・「全体についての消防計画」の作成と提出(詳細は後述)
・同計画に基づく、消火、通報、避難の訓練の実施
・対象建物の共有部(廊下や階段等)、避難に必要な施設等の管理
・各防火管理者に対する防火管理業務の指示および誠実な職務遂行
このように、統括防火管理者は、防火対象物における防火管理業務の中心的な存在として、各防火管理者に対して、防火管理業務上必要な指示を出す「指示権」も有します。
統括防火管理者と防火管理者の違い
統括防火管理者と防火管理者の主な違いは以下の通りです。
・資格の有無
・防火管理業務の対象(管理権原の範囲)
資格の有無
先述したように、統括防火管理者という資格は存在しません。対照的に、防火管理者という国家資格は存在します。
つまり、統括防火管理者と防火管理者の違いは「資格の有無」と言えます。ただし、統括防火管理者という資格こそありませんが、統括防火管理者に選定されるには「防火管理者の有資格者」や「防火管理講習修了者」であることが要件ですので注意しましょう。
防火管理業務の対象(管理権原の範囲)
「防火管理業務の対象(管理権原の範囲)」も統括防火管理者と防火管理者の違いです。統括防火管理者は対象となる防火対象物全体の防火管理業務を請け負うことになりますが、防火管理者は対象となる部分(テナント等)のみとなります。
統括防火管理者が必要な防火対象物の条件
統括防火管理者が必要となる防火対象物の条件を要約すると以下のようになります。以下に該当する場合で、なおかつ管理の権原が分かれている場合は、統括防火管理者を選任しなければいけません。
・高さが31メートルを超える高層建築物
・消防長または消防署長が指定する地下街
・特定用途が含まれる準地下街
・3階以上(地階を除く)収容人員が10人以上の避難困難者がいる施設(老人介護施設等)
・3階以上(地階を除く)収容人員が30人以上の特定防火対象物(ホテルや病院等)
・5階以上(地階を除く)収容人員が50人以上の非特定用途防火対象物
統括防火管理者の選任が必要な理由
統括防火管理者の選任が必要な理由は、管理の権原が分かれやすい雑居ビル等において、過去に火災による被害が発生し、消防法が改正されたためです。
具体的には、2008年に大阪市で発生した個室ビデオ店放火事件(死者16名、負傷者9名)や、2009年に高円寺で起きた雑居ビル火災(死者4名、負傷者12名)などがあります。
これらの火災原因の調査結果では「ビルの廊下や階段といった共有部分における防火管理の役割や責任が明確でなかった」ことや「テナント部分の名義変更や拡張時において防火管理の役割および責任が不届けにより明確になっていなかった」ことが指摘されています。
つまり、雑居ビルのように複数のテナントが入居する場合、防火管理業務の役割や責任に抜け漏れが生じることが浮き彫りになった訳です。
このような事態の是正、そして同様の火災被害を未然に防ぐ目的で、2014年4月1日より「統括防火管理者制度」が新たに規定されました。
雑居ビルのような複合用途の建物では、避難通路となる階段や廊下等の共有部にテナントの荷物が置いてあったり、テナントが消防法を考慮せずに無断で内装を変更したりすることが多く、それらの監督や管理が行き届かない結果、火災被害が大きくなりがちです。
統括防火管理者制度は、このような事態を防ぐとても重要な制度なのです。
統括防火管理者選任(解任)届出書とは
統括防火管理者を選任しなければいけない防火対象物(原則は建物のオーナー)は、統括防火管理者を選任していればいいという訳ではありません。
統括防火管理者選任あるいは解任後、所轄の消防署長宛てに「統括防火管理者選任(解任)届出書」を提出する義務があります。
また、合わせて「全体についての消防計画」の提出も義務付けられます。「全体についての消防計画」については、次で詳しく解説します。
参考:統括防火管理者選任届、東京消防庁
全体についての消防計画とは
統括防火管理者を選任した後、管轄の消防署長宛てに「統括防火管理者選任(解任)届出書」に加え「全体についての消防計画」も提出しなければいけません。
「全体についての消防計画」とは、防火対象物における防火管理業務の役割や責任、そして計画を明確にし、書面に残すことを指しています。
具体的な内容としては以下のようなことが挙げられます。
・管理権原の明確化
・防火管理業務を委託する場合の対応計画
・消火、通報、避難といった訓練の実施計画
・避難に必要な施設等の管理計画
・非常時の対応計画
・消火活動等に対する建物に関する情報提供
「全体についての消防計画」で網羅すべき事項は建物に応じて多岐にわたります。また、各テナントの防火管理者が作成する消防計画と適合している必要もあるため注意しなければいけません。
従って「統括防火管理者選任(解任)届出書」と「全体についての消防計画」の作成および提出は、統括防火管理者選任後、消防点検のプロに依頼する方がよいかもしれません。
統括防火管理者の選定方法
統括防火管理者は、消防法上、対象となる防火対象物の防火管理者らと協議して選任することが原則になっています。
つまり、各テナントの代表者(防火管理者)と話し合いをして選任するという意味です。しかしながら、このような方法は現実的とは言い難く、実質的には「建物のオーナー」が統括防火管理者に選定されることがほとんどです。
対象となる建物の消防設備の保守や定期点検は、テナントが担当するよりもオーナーが担当する方が何かと円滑です。
このような現実的な事情から、統括防火管理者は建物のオーナーというのが実情と言えるでしょう。
統括防火管理者について注意すべきこと
統括防火管理者について注意すべきこととして以下が挙げられます。
・情報の管理と更新
・書類の提出
情報の管理と更新
統括防火管理者は「情報の管理と更新」に注意しなければいけません。具体的には、統括防火管理者が変更になった場合や、テナントが変わった場合、テナントの用途が変わった場合などがあります。
とりわけ注意すべき点が「テナントの情報」です。入れ替わりが頻繁な雑居ビルなどの場合は、ついつい疎かになりがちです。
また、テナントの業種や業態が変わり、用途が変わる場合も要注意です。
書類の提出
統括防火管理者は「書類の提出」を忘れないでください。統括防火管理者の選任届だけでなく、全体についての消防計画も提出が必要です。
まとめ
統括防火管理者は資格が存在する訳ではありません。あくまでも、防火管理者の代表的な存在です。
一方、統括防火管理者には防火管理業務の責任が生じますので、安易に考えてはいけません。提出が義務付けられている書類などもありますので、消防点検のプロに相談することをおすすめします。
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