消防法
2023.04.26
消防法の別表とは?消防法施行令別表第1を徹底解説
消防法を読んだことがある人の中には「別表」や「消防法施行令別表第一」さらには「令別表第一」という言葉を目にしたことがある人は多いと思います。
消防法の別表は、消防法で規定される「建物の用途」を一覧にしたもので、消防設備士試験をはじめ、消防点検の際などで頻繁に用いられます。
一方、別表は20項目に及び、さらに特定用途と非特定用途に分かれているものもあるため、理解したり覚えたりするのは大変とされています。
そこでこの記事では「消防法の別表」について、初心者にもわかりやすく解説します。
消防法の別表とは
消防法の別表とは、消防法施行令別表第1のことです。一般的には「令別表第1」や「別表」などと呼ばれることが多いですが、同じものを指しています。
消防法の別表は、消防用設備の設置義務がある建物の「防火対象物」を分類した一覧表であり、消防法の本文中でも頻出します。
また、合計20項目にわたる防火対象物のなかでも、さらに「特定用途」と「非特定用途」のふたつに分類されているものもあり、別表が複雑と言われる理由になっています。
別表は、消防法を理解するうえでも重要ですが、消防設備士の試験勉強や、消防点検といった業務でも用いられることが多く、消防に関連する人にとっては、最も馴染み深い消防法の一部と言えるでしょう。
消防法の別表は、消防設備士試験などにも関連するため、まるごと暗記しなければいけない人もいるかもしれません。
消防法の別表に関する覚え方は「替え歌」や「語呂合わせ」などがありますが、かえって複雑化するため、印刷したり、携帯電話にメモを入れたりして、ひたすら「目に触れる機会を増やす」ことをおすすめします。
消防法の別表
消防法の別表、消防法施行令別表第1を要約すると以下のようになります。なお、下記表の建物の用途に記載されている注釈「(*)」は「特定用途」のことを指しています。
項別 | 建物の用途(*は特定用途) |
1項イ 1項ロ | 劇場等(*) 集会場(*) |
2項イ 2項ロ 2項ハ 2項ニ | キヤバレー・ナイトクラブ(*) 遊技場・ダンスホール(*) 性風俗店舗(*) カラオケ・個室ビデオボックス(*) |
3項イ 3項ロ | 料理屋(割烹・料亭など)(*) 飲食店(*) |
4項 | 百貨店・物品販売店舗(*) |
5項イ 5項ロ | ホテル・旅館(*) 共同住宅・マンション |
6項イ | 病院(*) |
6項ロ | 老人短期入所施設(*) |
6項ハ | 老人デイサービスセンター(*) 保育所(*) |
6項ニ | 特別支援学校(*) 幼稚園(*) |
7項 | 小・中・高などの学校・大学その他学校 |
8項 | 図書館・博物館・美術館 |
9項イ 9項ロ | 蒸気浴場・サウナ(*) 一般浴場 |
10項 | 車両停車場 |
11項 | 神社・お寺・教会 |
12項イ 12項ロ | 工場 映画・テレビスタジオ |
13項イ 13項ロ | 車庫 航空機などの格納庫 |
14項 | 倉庫 |
15項 | その他事業所(事務所・美容室・整骨院など) |
16項イ 16項ロ | 複合用途【特定用途が入居】雑居ビル(*) 複合用途【特定用途が入居なし】 |
16項2 | 地下街(*) |
17項 | 重要文化財 |
18項 | 延長50メートル以上のアーケード |
19項 | 山林 |
20項 | 舟車 |
消防法の別表をダウンロード・印刷するなら
消防法の別表をダウンロードして印刷する場合は「消防法施行令別表第1」を活用してください。
これはA4サイズ2枚で、消防法の記載そのまま、そして項別を見やすくしてあるため、消防法の原本よりもおすすめです。
なお、消防法の原本を確認したい場合は「消防法施行令(附則内の別表第一)」をご覧ください。
引用:消防法施行令別表第1、筑紫野太宰府消防本部
消防法の別表における特定用途と非特定用途の違い
消防法の別表を理解する際に重要になるのが「特定用途」と「非特定用途」の区分です。特定用途と非特定用途には以下の違いがあります。
・特定用途:不特定多数の人が利用する建物
・非特定用途:該当する建物を利用する人が決まっている
「特定用途」の具体例としては、映画館や飲食店、さらにはホテルといった建物が挙げられます。
これらの用途の建物に共通することは「不特定多数の人が比較的自由に出入り可能」ということですので、消防法の別表を暗記する際に参考にしてみてください。
対照的に「非特定用途」の具体例には、マンションやアパートといった共同住宅、学校、そして図書館などが挙げられます。
これらの用途の建物に共通する点として「利用者がある程度決まっており、なかおつ特定用途と比較して火災の危険性が低い」ということがあります。
特定用途と非特定用途の違いで混乱しがちなのが「図書館」や「美術館」などです。これらは不特定多数の人がある程度自由に出入りする建物であるのに限らず「非特定用途」に分類されています。
他にも「病院」は特定用途であるのに対し「整体院」なら非特定用途となり、消防法の別表ではところどころ勘違いしやすい部分があるので、覚える際には注意しましょう。
特定用途に該当すると生じる影響
消防法の別表で区分されている建物の用途は、特定用途に該当する場合、以下のような影響が生じます。
・消防用設備の設置基準
・防火管理基準
上記2つについてそれぞれ解説します。
消防用設備の設置基準
特定用途に該当する場合「消防用設備の設置基準」が、より厳しく設定されます。具体的な例として、自動火災報知設備の設置基準が挙げられます。
自動火災報知設備は、熱感知器や煙感知器、火災受信機、非常ベルといった音響装置などで構成される大掛かりな消防用設備です。
自動火災報知設備は、非特定用途の建物であれば原則として「500平方メートル以上」が設置対象ですが、特定用途の建物では原則「300平方メートル以上」と規定されています。
さらに、特定用途の建物が「無窓階」「地下階」「3階以上」のいずれかに当てはまる場合は、より厳しい条件が適用され「100平方メートル以上」となります。
つまり、本来であれば自動火災報知設備を設置しなくてもよい面積の範囲であったとしても、特定用途の建物の場合は、設置義務が生じやすいため「設置基準が厳しい」と言い換えられます。
設置基準が厳しく設定されている理由としては、先述したように特定用途の建物は「不特定多数の人が比較的自由に出入り可能」ということがあり、万が一火災が発生した際に、大きな人命被害が想定されるためです。
防火管理基準
特定用途の建物は「防火管理基準」にも影響が生じます。該当する建物では「収納人員」に合わせて、防火管理者を選定しなければいけません。
防火管理者は、該当する建物で火災が発生した際に「火災等による被害」を防止するための、管理的および監督的地位にある責任者のことです。
具体的な役割としては、消防計画の作成をはじめ、防火管理業務の計画および実行に関する責任を負うことになります。
消防法において、防火管理上必要な知識と技能を有していることと規定されており、一般的には防火管理講習修了者が選任されます。
つまり、特定用途に該当する場合は、防火管理者を必ず選定しなければいけないということで、このことは実質的に手間や労力がかかることと言えます。
消防法では、防火管理者の選定などを定期的に点検および報告する罰則規定付の「防火対象物定期点検報告制度」が定められています。
このように、特定用途に該当する場合は、消防用設備の設置基準が厳しくなるだけでなく、責任者の選定といった人的な負担も増すことになります。
消防法の別表で最も厳しい基準は?
消防法の別表では、火災が発生した際に人命被害が想定される建物を「特定用途」として規定しています。
このなかで最も厳しい特定用途の建物は「6項の老人デイサービスセンター(有床老人ホーム等)」とされています。
この理由は「避難困難な高齢者が多いことが想定されるため」で、他の特定用途の建物と比べ、延べ面積に関係なく「スプリンクラー設備」の設置が義務付けられています。
スプリンクラー設備は非常に高額で、大掛かりな消防用設備ですが、無条件で設置義務が生じるため、最も厳しいと言われています。
消防法の別表で最も混乱しやすい基準は?
消防法の別表で最も解釈が難しいとされているのが「16項の複合用途」です。複合用途とは、ひとつの建物内に2つ以上の異なる用途が混在しているパターンを指しています。
複合用途は「雑居ビル」のことと思って差し支えないでしょう。このような雑居ビルにおいては「単体用途か複合用途か」といった判定に関する問題が生じやすくなります。
例えば、飲食店と住居、さらに宿泊所が混在する場合、特定用途や非特定用途の基準がひとつとは限りません。
このようなケースにおいて、消防法の適用をどのように処理(判定)するかが問題になってしまう訳です。
雑居ビルの性質上、単体用途もしくは複合用途の判定は実質的に無限と言え、所轄の消防署、行政、そして消防点検の専門家などの見解が必要になります。
加えて、各市町村によって異なる火災予防条例も考慮せねばならず、複合用途(雑居ビル)は最も混乱しやすいので注意しましょう。
まとめ
消防法の別表とは消防法施行令別表第1のことで、消防用設備の設置基準などを知る際に根拠なる重要なものです。
また、所轄の消防署に届出をする際などにも用いるため、消防設備士を目指す人だけでなく、ビル管理者や防災管理者はよく把握しておくことをおすすめします。
消防法の別表は暗記することも重要かもしれませんが、特定用途や非特定用途などの条件が複雑に変わるケースもあるため、丸暗記すればよいとは限らないので注意してください。
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