消防点検コラム

消防用設備

2022.12.22

防火扉で火災をシャットアウト!

火災は発生すると同時にいっせいに燃え広がります。広まった火災は手のつけようがなく、被害も甚大です。

そんなときに人知れず活躍するのが防火扉。

広い部屋を小さく区切ったり、避難階段に火災が侵入しないように設置が義務付けられているため火災の被害を最小限に防ぐことができます。

今回はそんな防火扉や、防火扉の開閉に重要なラッチ(レリーズ)部分について解説します。


【目次】

1. 防火扉ラッチとは
2. 防火扉が開かない?開かない原因と復旧方法
3. 交換時期について
4. 設置基準
5. まとめ

1. 防火扉ラッチとは

防火扉ラッチとは、平常時には防火扉を固定しておき、火災が発生したときに防火扉を開放するための部品です。

ラッチとは英語でかけ金や留め金を意味し、通常のドアノブで開くような扉の側面についている飛び出た金具のことです。これがあるおかげで扉が勝手に解放されないようになっています。

防火扉ラッチとはその名の通り、火災用の防火扉を引っ掛けておくシステムです。

火災が発生したり、感知器が煙を感知したりすると火災信号がラッチ部分に送られ、自動で扉を開放・閉鎖するものが大部分を占めています。

学校の階段などに設置されているのを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

 

また、別の呼び方で『防火扉レリーズ』と呼ばれることもありますが、これも英語で『自由にする、開放』などの意味を持つためと考えられており、どちらの呼び方も同じものを指します。

今回の記事では呼び方は防火扉ラッチに統一させていただきます。

詳しく解説

防火扉は建築基準法・消防法上の防災設備の一つで、防火戸ラッチはその一部です。

防火扉は基本的には常時開放されていますが、火災を感知すると自動で閉まる仕組みです。

常時閉鎖型の防火扉もありますが、主に階段室などの区画部分に使用されることが多いです。

防火扉は煙や火の手が避難経路に侵入・拡大するのを防いでくれます。

安全な避難経路の確保に重要な役割を果たしているんです。

しかし、火災発生時にはじめて作動するものなので日常的な点検が困難です。

そのため、消防設備点検時に防火扉開閉作動確認を行う必要があります。

防火扉の種類

防火扉ラッチには電磁式と温度ヒューズ式の2種類があります。

「電磁式」は煙感知器の作動に連動していて、制御盤より信号が送信されるとラッチのロックが解除されて防火戸が開放されます。

「温度ヒューズ式」は本体に低融点金属部分があり、

金属部分が火災時の炎の熱で融けることでロックが解除、防火戸が解放されます。

2. 防火扉が開かない?開かない原因と復旧方法

非常時の安全な避難経路の確保のために必要な防火扉ですが、経年劣化やホコリがたまることで扉が閉まらなくなったり、必要時にしっかりと動作しない可能性もあります。

ここでは閉まらなくなる原因とその復旧方法について解説します。

原因その1ラッチ機械の故障

シンプルに防火扉のラッチ部分が破損していることでしっかりと閉まらない場合が考えられます。

基本的に防火扉は常時開放(壁にくっついている状態)されていて、非常時にのみ作動して扉を閉めるシステムです。

そのため日常的な開け閉めに対応していない製品もあり、建物の営業が終了するときや学校の放課後に建物内に入れないようにするために開け閉めを行うと、動作不備を起こす可能性があります。

今では管理扉用という日常的な開閉にも対応している、防火扉ラッチが発売されているので非常時以外にも開閉を行う予定があるという場所にはこちらを設置するのがおすすめです。

 

機械的に故障していると判明したときは器具を交換する必要があります。

原因その2ゴミの侵入

上記でも説明した通り、防火扉には日常的な開け閉めには基本的に対応していません。

そのような製品を日常的に開け閉めすると、想定以上にラッチ部分にゴミが溜まったり、扉が床と擦れて多少変形したりしてしまう可能性があります。

ラッチの不良かな?と思ったらまずは金具部分の清掃や、床と扉の隙間の清掃などを試してみてください。

 

原因その3電気部分の故障

さきほど、防火扉ラッチは電磁式というものが一般的とお伝えしました。

電磁式のものは自火報設備や防火扉用煙感知器から火災信号を受信してから自動で作動し、扉を開放する仕組みのため、火災信号を受信する仕組みのどこかで不具合があると、防火扉も連動して自動開放しなくなります。

 

電気信号をしっかりと受信している場合は、受信した際に『カチッ』というソレノイドが作動するレリーズ音と呼ばれる音が聞こえるはずです。

この音も聞こえず、反応がない場合は電気的な不具合が発生している可能性が高いです。

そうなると内部のどこの部分の故障か分からないため、原因調査をしたのち、適切な改修工事を行う必要があります。

防火扉が開かない…それ直せます

防火扉は現行式と旧式で復旧方法が異なります。

現行式の防火扉は制御盤が復旧した後そのまま防火扉を押し込むだけで復旧します。

ですが種類によってはラッチそのものの復旧作業が必要になります。

 

ラッチの復旧作業が必要な場合は、制御盤で復旧操作を行ったのちラッチ側で作業が必要です。

例を挙げると、ラッチ付近についている復旧スイッチをシンプルに押すものから、

昔のタイプになると丸いマグネットを使用しているものもあります。

その場合は扉側についているプレートを上げることで復旧完了となります。

型式によって復旧方法は異なりますが、特別難しいものはありません。

復旧したい防火扉ラッチがどんなタイプのものか確認してから作業しましょう。

 

ラッチの復旧作業が終了したあとそのまま防火扉を押し込めば防火扉の復旧作業が完了します。

 

3. 交換時期について

防火扉自体の交換時期は非常に長いです。

メンテナンスもほとんど必要ないと言っていいぐらいです。

扉の蝶番部分が傷んできたり、扉の退色が起こる程度で、防火扉としては20年程度使用しても問題ありません。

しかし防火扉はその性質上普通の扉よりも重くなりがちなため、ドアの開閉部分や蝶番部分などの負担が大きくなる傾向にあります。

定期的にチェックする事が重要です。

 

扉側は長期間保ちますが、防火扉ラッチ部分は形式によっては10年以下で寿命を迎えます。

そのため使用していなくても耐用年数を超えてくるのであれば、交換することをおすすめします。

電磁式の防火扉ラッチの寿命は約7~8年程度。

 

『ヒューズ式の防火扉ラッチの交換時期が来たしせっかくだから電磁式に変更しようかな』とお考えの方もいるかと思いますが、電磁式の防火扉ラッチを新設するとなると配線工事が必要です。

そのため、コストの面から見てもヒューズ式が既設の場合は、そのままヒューズ式に交換することがほとんどです。

現在主流なのは電磁式の防火扉ラッチです。

 

しかし、防火扉の開閉に異常が発見されても焦ってはいけません。

上記開かない原因その2でも紹介した通り、ゴミが侵入しただけのケースもあれば内部電気部分の故障の可能性もあります。

ラッチ部分の不具合が原因かどうかも不明のため、専門業者に点検を依頼してから交換することをおすすめします。

4. 設置基準

防火扉は防火設備のうち、特定防火設備に分類されます。

特定防火設備に分類される防火扉は1時間火に耐えられる構造を持ったものです。

建築基準法によって設置の基準が決められており、以下のような場所にせっちが義務付けられています。

・外壁の延焼の恐れがある部分

・一定以上の面積区画

・エレベーターや階段室などのたて穴区画

・避難階段

・地下施設

外壁の延焼の恐れがある部分

これは付近の建物や隣の建物で火災が発生した際に、燃え移る可能性がある外壁部分のこと。

自らの建築物ではなく、近隣に建物があるかどうかで変わってくる要素なので注意が必要です。

一定以上の面積区画

面積が広い建物で火災が発生すると被害もその分大きくなってしまいます。

そのため、被害を最小限に納めるためにも防火設備で小さく区分けをするようにという法令があります。

これは防火区画と呼ばれるもので炎が水平方向に広がらないように分けることを面積区画と呼びます。

面積区画は、建物の構造や広さによって変わり、100㎡~1500㎡ごとに防火戸を設置する必要があります。

エレベーターや階段室などのたて穴区画

階段室やエレベーターなどのたてあな区画は、防火戸の設置が必須です。

高層建物の避難階段などが火災によって使用できずに、孤立してしまうと救助も困難になり、助かる可能性が低くなる可能性があります。

そのため、安全で迅速な避難をするためにも避難階段の防火扉設置が必要なんです。

 

地下施設

地下施設はそもそも煙が炎がまん延しやすく、避難経路も限られています。限られた出口が塞がらないように、そして避難時間をより多く確保するため、防火扉の設置が義務付けられています。

設置場所の規定は各自治体によって異なる場合もあるので施工する前に担当箇所に確認することをおすすめします。

 

以上より、防火扉は必ず設置しなければいけないものではありませんが、火災の被害や延焼を防ぐためにも重要な役割を持つものです。

 

それ以外にも地域によって火災の発生しやすい場所が「防火地域」・「準防火地域」として定められているケースもあります。

ここで指定された場所は防火扉などの設置が義務付けられています。

「防火地域」・「準防火地域」は一定の年数で改定される可能性もあるため定期的な点検と指定地域かどうかという判断も忘れずにしておく必要があります。

 

5. まとめ

防火扉は普段開放されている状態なので、特に意識したことはないかもしれません。

しかし、建物の階段部分をよく見てみると大きな扉がそこにはあることでしょう。

 

火災発生時には危機をいち早く感じ取り、火災が延焼して被害が大きくなるというようなことを未然に防いでくれます。

そのためには常日頃からラッチ部分の点検やメンテナンスをしておくことが重要です。

想定されている使い方から逸脱しないようにして、最大限効果を発揮できるように備えておきましょう。

 

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