消防点検コラム

消防設備士甲種4類の製図をわかりやすく解説

「消防設備士甲種4類」は、甲乙含め全部で13種類ある消防設備士の資格の中でも「最初の難関」と言われる資格です。

甲種4類は自動火災報知設備などの点検や整備、さらに設置工事などが出来るようになる資格のため、消防用設備に関係する業務に就きたい人や、活躍の幅を広げたいという人にとっては必要不可欠な資格と言えるでしょう。

一方で、甲種4類の試験では筆記試験の他に実技試験が加わります。そして、実技試験の中で難しいとされているのが「製図」です。

「製図」を理解することが甲種4類の合格を左右するとも言われているため、とても大切なポイントと言えます。

この記事では、これから消防設備士甲種4類を取得しようと考えている人に向けて、製図に関することについてわかりやすく解説します。

すでに消防設備士の甲種4類以外の資格を保有している人だけでなく、初めて甲種4類を受験する人にも役立つ内容ですので参考にしてください。

【目次】

1. 消防設備士甲種とは?
2. 消防設備士甲種4類の特徴
3. 消防設備士甲種4類の製図とは
4. 消防設備士甲種4類の合格に向けた勉強方法
5. まとめ

1. 消防設備士甲種とは?

消防設備士の甲種とは、消防設備士の資格を大きく2つに区分する際に用いられる種類の名称のひとつです。

甲と乙のふたつに加えて、それぞれの種類で「類別」と呼ばれる、取り扱える消防用設備ごとにカテゴリーが分けられており、第7類から第1類、そして特類までがあります。

甲種は第5類から特類までの6種類、乙種は第7類から第1類までの7種類になっており、それぞれで資格の取得が必要です。(第1類を取得したからと言って第2類などを受験しなくていいとはならない)

消防設備士の甲種は設置や交換といった「工事」が出来ることが特徴で、乙種はあくまでも点検と整備に限定されることが大きな違いです。

甲種と乙種は「工事が出来るか否か」という大きな違いがあるため、甲種はより高度な知識と技術、そして責任が求められます。

これを示すように、消防設備士甲種は受験要件として資格の有無や実務経験、そして学歴までが問われています。(乙種には制限はない)

このように、消防設備士甲種は乙種よりも受験資格が厳しいながら、工事が出来るようになるメリットがあるため、人気の資格とされています。

参考:受験資格 一般財団法人消防試験研究センター

2. 消防設備士甲種4類の特徴

消防設備士甲種の中でもとりわけ人気があるのが4類でしょう。消防設備士甲種4類は、4類で認められている以下の消防用設備の点検、整備、そして工事が出来る資格です。
・自動火災報知設備
・ガス漏れ火災警報設備
・消防機関へ通報する火災報知設備
これらの消防用設備は広く一般的に使われている物であることから、点検や整備さらには工事の機会が多いことが特徴です。

つまり、資格を有していると業務に生かしやすいと言えます。このようなことから、消防設備士甲種4類に挑戦しようと考える人が多いようです。

一方、消防設備士甲種4類は数ある消防設備士の資格のなかで「最初の関門」と位置付けられていることも事実です。

その理由が、試験において実際の工事を想定した配線の記入や、感知器の選定といったことを問われる「製図」が出題されるためです。

日常的に見慣れない製図を使った問題は筆記試験とはまったく別物で、覚えることの幅と量が広がるとされています。

消防設備士甲種4類は、実務経験を積んでいる人や、すでに別の消防設備士資格を保有している人からすると簡単と言われがちですが、初めて挑戦する人にとっては難しく、とりわけ「製図」で脱落してしまう人が多いでしょう。

合格率

消防設備士甲種4類の合格率は、過去5回を平均すると33.42%です。

合格のポイント

消防設備士甲種4類に合格するためには、実技試験の「製図」についてしっかり勉強し、得点することがポイントです。

消防設備士甲種4類は筆記試験と実技試験に分けられており、試験科目は以下のような配分になっています。

【筆記試験】(2時間15分)
・法令:共通・類別15問
・基礎的知識:電気10問
・構造、機能、工事および点検:電気・規格20問
【実技試験】(鑑別15分・製図45分)
・鑑別(写真を見て何の機器かを回答する問題):5問
・製図:2問
消防試験研究センターによると、合格基準は以下のように設定されています。

筆記試験において、各科目毎に40%以上で全体の出題数の60%以上、かつ、実技試験において60%以上の成績を修めた者を合格とします。なお、試験の一部免除がある場合は、免除を受けた以外の問題で上記の成績を修めた方を合格とします。

つまり、筆記試験で得点を稼いでも、実技試験で60%以上を得点しないと合格できない仕組みになっている訳です。

いかに「製図」で得点するかが消防設備士甲種4類の合格を左右します。

引用:試験の方法 一般財団法人消防試験研究センター

3. 消防設備士甲種4類の製図とは

消防設備士甲種4類の製図とは、設計図のような図面が描かれている答案用紙に感知器や配線を書き込んだり、図を見て設問に回答する試験のことです。

製図の問題数は2問で、主に「平面図の完成(建物を上から見た図)」と「系統図の完成(建物を断面で見た図)」で構成されています。

製図問題で問われることとしては、図面の条件に見合った「機器の選定」「配線の配置」「電線の種類や本数」などです。

製図で示されている部屋(湯沸室や便所、事務室、店舗など)に対して、どれくらいの警戒面積になり、その警戒面積に適した感知器はどれかを選ぶといったイメージです。

また、図面に描かれている建物や消防用設備(配線等)の不備を発見し、正しく修正する能力も求められます。

製図では、消防法や機器の特性を把握したうえで論理的に答えを導き出し、正確に記入しなければいけません。

製図問題のコツ

製図でしっかり得点するためのコツについて解説します。

先述したように、製図の問題では、描かれている建物の図面に対して最適な「機器の選定」や「電線の配置」などについて問われます。

これに回答できるようになるためには「建物の特性」と「機器の特性」の2つを把握することがコツです。

例えば「建物の特性」については、主要構造部や天井高によって異なる感知器の種類や設置数を覚えます。

また「機器の特性」については、感知器ごとに異なる警戒面積や、発信機や地区音響装置といった機器の水平距離や歩行距離、電線などを覚える必要があります。

これに加えて「電線の種類や本数」も覚えることになりますが「機器の特性」を理解していれば、自ずと覚えるようになるでしょう。

製図のポイント

製図で得点するためには「過去問」に触れることがポイントです。

製図問題で使用される図面はほとんどの人にとって日常的に目にする物ではありません。簡略化された表記であるものの、凡例や条件などが記載されているため、初めのうちは理解するのに一苦労でしょう。

一方で、過去問をやり続けていると製図を見慣れてくるようになり「ヒント」や「ひっかけ」に気づけるようになります。

例えば、条件に「無窓階」があるものは「ひっかけ問題」として慎重に対処できるようになるでしょう。

他にも、一見は何も問題なさそうな図面の場合、わずかな配線の不備を問われていることに感付くようになるかもしれません。

つまり、製図は「問題の意図に感付けるまで過去問をやる」ことがポイントと言えるでしょう。

4. 消防設備士甲種4類の合格に向けた勉強方法

消防設備士甲種4類、とくに「製図」対策の勉強方法を紹介します。

独学

最も基本的な勉強方法と言えるでしょう。コストがかからず、自分のペースで勉強できることがメリットです。

対照的に、製図問題における「ひっかけ」や「問題の意図」を把握できるようになるまで時間がかかることや、モチベーションの維持に苦労するのがデメリットと言えるでしょう。

独学が向いている人としては以下のような人が挙げられます。

・製図や図面に慣れている
・すでに消防設備士の(他の)資格を保有している
・毎日一定時間勉強する時間を確保できる
・資格取得後の明確なゴールがある
・中長期的にコツコツと勉強を続けるのが好き

通信講座

消防設備士甲種4類の勉強法として「通信講座」もあります。とくに製図ではテキストや過去問といったポイントを理解しやすい教材が揃っていることが強みと言えるでしょう。

一方で、教材費などにコストがかかるのがデメリットのため、資格取得後の明確なゴールがない人にとっては投資分の価値が回収できるかどうか不透明です。

通信講座が適している人には以下のタイプがあります。

・製図や図面に慣れていない
・より合格率を高めたい
・誰かに教えてもらう方がいい
・追い込まれないと勉強しないタイプ

インターネット(YouTube)

独学と重複する部分もありますが、昨今ではインターネットとくにYouTubeの動画で製図を勉強する人もいます。

有資格者によるレクチャー動画がたくさんあるため、好みのチャンネルを使って解説付きで勉強可能です。

製図の問題では、問われていることや要点を理解することが大切ですので、動画を通じてそれらのことを把握できるようになることは有効と言えます。

インターネット(YouTube)を使って勉強した方がいい人は以下のような人です。

・製図を解説付きで教えてもらいたい
・勉強時間が確保できない
・移動中でも勉強したい
・テキストを読むよりも講義を聞くほうが好き

5. まとめ

消防設備士甲種4類の製図は決して難しい問題ではありませんが、製図を見慣れない初心者にとっては慣れるまでは難しく感じるでしょう。

製図でしっかり得点するためには、問題の条件を把握し、問われている内容を理解することが大切です。これが出来れば、暗記した建物の特性や機器の特性を使って答えが導き出せるようになります。

消防設備士甲種4類に合格するためには、製図の過去問に触れる機会を増やして様々な問題パターンを経験しておくことをおすすめします。

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