解説
2022.11.28
ボードの開口方法を徹底解説!やり方や特徴もよく分かる
消防設備を設置する際に必ずと言っていいほどに取り扱う物のひとつが「石膏ボード」ではないでしょうか。
石膏ボードは「ボード」や「プラスターボード」とも呼ばれ、消防設備を設置する現場や消防法に適用した建物、さらには一般家庭などでも多く使われています。
石膏ボードは耐火性や防火性、そして「開口などの加工のしやすさ」に優れており、とくに消防設備の設置や電気工事などの時に開口することがあります。
ボードの開口をするにあたり、あらかじめ知っておいた方がよい特徴や法律との関係、ちょっとしたコツなどを理解しておくと役に立つと思います。
この記事では、石膏ボードの開口方法や注意点、そして石膏ボードの特徴や弱点などについても徹底解説します。
【目次】
1. 石膏ボードとは
2. 石膏ボードの注意点
3. ボードの開口をするのに必要な工具や道具
1. 石膏ボードとは
石膏ボードとは、硫酸カルシウムと水で出来た「石膏」を、ボード用原紙で包んだ板状の建築用資材のことです。
主に、一般住宅、オフィスビル、商業施設、ホテルなど、あらゆる建築物に使用されています。
基本的には「壁や天井の裏側」に使用されることから、日常的に目にする機会は少ないものの、多くの建物で欠かせない資材と言えるでしょう。
また、石膏ボードは低コストでありながら、耐火性や防火性に優れています。厚み12ミリメートル以上の物は、火災時における火熱によって燃焼しない「不燃材料」として認められています。
つまり、条件を満たした石膏ボードであれば、消防法や建築基準法を満たしていることになるため、多くの場所で使われているという訳です。
石膏ボードの特徴
石膏ボードには以下のような特徴があります。
・防火性が高い
・耐火性が高い
・施工性が高い
・防音性が高い
・水分や湿気に弱い
石膏ボードは消防設備の設置場所に限らず、建築物全般に用いられるほど万能性が高いことが特徴です。
とりわけ、防火性や耐火性に優れていることから、万が一の火災時でも被害を防ぐことに役立ちます。
対照的に、水分や水気に弱いことも特徴として挙げられます。例えば、施工時に雨に濡れてしまったり、壁や天井裏に湿気がこもったりする場合は強度が落ちてしまいます。
このような特徴から、石膏ボードは「火に強いが、水に弱い」と覚えておくとよいでしょう。
石膏ボードの素材
石膏ボードの素材は「石膏」と「石膏ボード用原紙」です。
石膏は硫酸カルシウムと水で出来ています。石膏は化学組成上「二水石膏」「半水石膏」そして「無水石膏」の3つに分類されます。
建築資材として利用されているのは「二水石膏」です。石膏ボードが出来る仕組みとしては、120度から150度で加熱すると焼石膏(サラサラした粒子状)になり、水を加えると水和反応によって再び二水石膏に戻って固まるという性質を利用しています。
つまり、粒子状の硫酸カルシウムを型に流し込み、水を加えることで凝固して形が形成されるという仕組みです。
こうして出来た石膏を「石膏ボード用原紙」で包んだ物が石膏ボードという訳です。石膏ボードの主材料である石膏は、熱と水で容易に加工ができ、短時間で量産できることから、建築素材として理にかなっている素材とされています。
石膏ボードの目的と種類
石膏ボードは建物の天井や壁に「防火、耐火、遮音」を目的にして下地として使用されます。
一方で、同じ石膏ボードでも、目的に合わせてより効果を発揮できるように改良された物もあります。
例えば、キッチンや洗面所といった水回りの天井や壁などには「シージング石膏ボード」と呼ばれる水気に強い物が用いられます。
また、防火や耐火性能、耐衝撃性を高めるためには「強化石膏ボード」などが適しています。他にも防音性に秀でた「吸音用穴あき石膏ボード」、塗装や加工を前提にした「化粧石膏ボード」などがあります。
石膏ボードの弱点
石膏ボードは「水気に弱い」ことが弱点と言えるでしょう。一般的な石膏ボードは「二水石膏」と呼ばれる熱と水によって凝固させたり、粒子にしたり出来る物が使われているため、石膏部分が水を含むと柔らかくなって強度が落ちてしまいます。
従って、雨に濡れたり、湿気が溜まったりする場所での使用は注意が必要です。
石膏ボードの見分け方
消防設備の設置の際に開口が必要になることもありますが、壁紙やクロスが張られていて石膏ボードが使用されているかどうかが分からないこともあるでしょう。
その場合は、画鋲や先端が尖った針のような物を差し込んでみて、先端に白い粉が付着するようなら石膏ボードであると見分けられます。
一方、白い粉が付着しない場合は、ベニヤ板や薄い木壁などと見分けられるでしょう。開口する時に使用する工具など、準備が変わるため前もって試すことをおすすめします。
石膏ボードと法律の関係
石膏ボードは防火性や耐火性に優れていることから、建築基準法および消防法では、その厚みによって「不燃材料」や「準不燃材料」そして「難燃材料」として認められています。
とりわけ「厚さが12ミリメートル以上の石膏ボード(ボード用原紙の厚さが0.6㎜以下のものに限る。)」は、最も防火性と耐火性に優れた「不燃材料」として認められていることから、建築基準法や消防法の緩和が受けやすいメリットがあります。
例えば、不燃材料を活用することで「建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)」が緩和されたり、消火器の設置本数が減らせたり出来ます。また、火災保険料の減額が受けられる可能性もあります。
ちなみに、不燃材料として認められている厚さ12ミリ以上の石膏ボードの場合、建築基準法施工令の第108条2号において、燃焼せず、変形や亀裂といった損傷がない状態を20分間維持できる性能が定められています。
2. 石膏ボードの注意点
ボードを開口することで、ボード本来の性能を損なう可能性があるため、開口前に認識しておくべき注意点を解説します。
防火性能および耐火性能が損なわれる
ボードを開口するにあたり、石膏ボードは厚さによって防火性能および耐火性能が変わることを認識しておきましょう。
以下で示す「耐久性」とは「燃焼しないもの」「防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること」「避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること」の3つの要件を満たすことです。
建築基準法を元にすると以下のようになります。
・12ミリ以上(ボード用原紙の厚さが0.6ミリ以下のもの):加熱開始後20分間の耐久性
・9ミリ以上(ボード用原紙の厚さが0.6ミリ以下のもの):加熱開始後10分間の耐久性
・7ミリ以上(ボード用原紙の厚さが0.5ミリ以下のもの):加熱開始後5分間の耐久性
石膏ボードの防火性能および耐火性能は開口部などがない状態が基準になっています。つまり、消防設備の設置のためとは言え、開口すると性能を満たさなくなる可能性がある訳です。
建築基準法や消防法の法令点検に合格するためには、あらかじめ所轄の消防署へ相談するか、開口処理に関する個別認定を取得している電設資材メーカーに施工してもらう必要があるので注意しましょう。
濡れると強度変化が生じる
ボードを開口する作業では水分に注意しましょう。とくに、天井からの水漏れや雨の日の作業では石膏ボードが濡れやすくなります。
石膏ボードは水分によって強度や耐久性が損なわれる可能性があることを忘れないようにしましょう。
3. ボードの開口をするのに必要な工具や道具
ボードを開口する際には以下の工具や道具があると便利です。
・石膏ボード開口のこぎり
・ボードトリマー
・ホールソー
・保護メガネ(アイプロテクター)
・マスク
ボードを開口する時には粉塵が出るため、保護メガネ(アイプロテクター)やマスクを用意してください。
とくに、すでに天井に取り付けられているボードを開口する時は粉塵が降りかかるようにして落ちてきます。
ボードを開口するのが1回限りの作業であれば「石膏ボード開口のこぎり」で十分でしょうが、正確性や生産性などを考慮する場合は「ボードトリマー」や「ホールソー」がおすすめです。
ボードを開口するやり方
ボードを開口する際のやり方について解説します。手順は大きく分けて以下の2つで、いたって簡単です。
- 墨だし
- 開口をあける
ボードに開口する部分に鉛筆などでラインを下書きする「墨だし」をします。直線的な開口は容易ですが、丸く開口する場合はコンパスがあると便利です。
次に、石膏ボード開口のこぎり等でボードに刃を入れるための切り込みを入れます。この際、ボードに刃を当てた状態で柄の部分を叩くようにすると貫通しやすいでしょう。
あとは、墨だしで引いたラインに沿ってゆっくり切っていくだけです。電動工具を使う場合は瞬時に完了しますが、手動の石膏ボード開口のこぎりを使う場合は時間がかかり、腕の力を必要とします。
ボードの穴埋め・補修のやり方
ボードの開口を穴埋めしたり、補修したりする場合のやり方を解説します。
・穴の面取り
・埋め込み用ボードの面取り
・当て木の設置
・取りつけ
はじめに、ボードの開口部および埋め込みに使用するためのボードの「面取り」です。開口部に沿って角部分を落として滑らかにします。この際は、のこぎりの刃または紙やすりで十分です。
ボードの開口部に埋め込み用のボードを固定出来るように「当て木」をねじ止めします。その後、埋め込み用ボードを開口部に入れて固定すれば完了です。
必要に応じて「石膏ボード用の穴埋めパテ」を入れて表面をならすと壁紙やクロス、塗装などの仕上げが綺麗になります。
まとめ
ボードを開口するにあたり、あらかじめ石膏ボードの特徴や弱点、建築基準法や消防法との関係を理解しておくことが大切です。
ボードの開口は作業としては難しいものではありませんが、建築基準法や消防法に影響する可能性があるため、作業前に所轄の消防署に相談することをおすすめします。
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