消防用設備
2022.11.28
熱感知器の詳細な設置基準とは?
火災が発生したときにいち早く検知してくれるのが火災感知器。
感知器とは部屋の天井に設置されている丸い物体のことです。
今、記事を読んでいる場所が室内でしたら頭上にあるかもしれません。
感知器にはシーンに合わせた、たくさんの種類がありますが、今回はその中でも熱感知器に焦点を当てて解説します。
【目次】
1. そもそも感知器とは?
2. 熱感知器の種類
3. どこに設置しなければいけないの?
4. 住宅用火災警報器の設置基準
5. まとめ
1. そもそも感知器とは?
感知器とは火災によって生じた熱や煙、炎を利用して火災を自動的に検知して火災信号を発信するもののことです。
感知できる種類によって分類されており、熱感知器、煙感知器、炎感知器の3パターンがあります。
基本的に、キッチンなどの煙が発生するような場所では熱式を、それ以外の居室には煙式を設置します。
感知器の種類は部屋の使用目的や天井の高さなどから適切に判断する必要があり、防水・防湿タイプなどがある熱感知器はサウナ室内などにも設置されているんです。
熱感知器はその感度の高さの違いによって特種・1種・2種とカテゴライズされています。
たとえば、感度が良い特種感知器が作動したときに非常ベルを鳴らすように設定しておき、感度が鈍い2種が作動した場合に防火シャッターや防火扉を動作させることも可能です。
このように感度が高いものと低いものを併用することで段階的に避難誘導を円滑に進めることができます。
熱感知器には差動式と定温式の2種類あり、火災の熱を検知して受信機に信号を送ります。
2. 熱感知器の種類
熱感知器には一般的に差動式と定温式の2つがあり、それぞれ火災感知の仕方によって区別されています。
差動式スポット型感知器
火災が発生すると周囲の温度が上昇します。
差動式はこの周囲の温度の上昇に伴い、内部の空気が膨張することを利用した感知器です。
特定の温度を感知したら信号を送るというわけではなく、一定の単位時間における温度の上昇割合によって作動します。
設置している箇所の温度上昇をすべて感知するわけではないので、緩やかな温度上昇の場合は作動しません。
これはリーク孔と呼ばれる小さな穴から空気が出ていき、空気の膨張が抑えられるためです。
差動式は現在一番使用されている型であり、ツルンとしたドーム型の見た目をしています。
通常、温度変化があまりない居室やオフィス、煙感知器だと誤作動の可能性が高い、喫煙室などで使用されるケースが多いです。
定温式スポット型感知器
定温式スポット型感知器は特定のエリアが一定の温度以上になると熱を感知し火災信号を発信する感知器です。
複雑なシステムではなく、シンプルに感知器周辺の温度が上昇して、一定以上の温度になった際に火災として感知します。
集熱版と呼ばれる平たい金属が中央にあり、それを囲うように隙間のあるカバーのようなものがついています。
でこぼこしていてスプリンクラーのような見た目が特徴的です。
それ以外にもあまり器具が露出していない埋込み型のものや防水タイプのもの、特殊な環境でも使用可能な耐酸・耐アルカリ型のものなどもあります。
定温式感知器は、熱が公称作動温度に到達すると感知するようになっています。
火災の感知が差動式よりも遅いため、湿度の高い場所での設置が一般的です。
また定温式スポット型感知器は、表面にバイメタルと呼ばれる銀色の集熱板が剥き出しになっているのも特徴です。
公称作動温度とは火災感知温度のことで、60℃以上150℃以下の範囲で設定されています。
60〜80℃は5℃刻みで、80℃を超えるものは10℃刻みで規定されています。
たとえばサウナで公称作動温度が60℃のものを使うとすぐに火災報知器が火災と判定してしまうでしょう。
そのような誤作動を防ぐためにも段階的に公称作動温度があり、シーンに合わせて適切なタイプを選択する必要があります。
感知器が作動するタイミングは公称作動温度を基準に設定されていて、公称作動温度の125% の温度を加えたときに、感度(特種〜2 種)に応じた規定時間以内で作動し、公称作動温度より10℃低い温度では作動しないようになっています。
定温式スポット型感知器を設置する際には、誤作動を防ぐためにも通常の最高温度よりも20℃高い公称作動温度の感知器を選択しましょう。
感度に応じた規定時間の違いは以下の通りです。
特種:公称作動温度の125%で40秒以内に作動する感度
1種:公称作動温度の125%で120秒以内に作動する感度
2種:公称作動温度の125%で300秒以内に作動する感度
(公称作動温度は感知器によって異なり、60~150℃の物があります)
この他にも景観を損ねたくない場合や工場などの広範囲に適している分布型というものもあります。
3. どこに設置しなければいけないの?
感知器はしっかりと役目を果たすために設置の際に消防法によって厳格なルールが定められています。
・感知区域ごとに、感知器の種別や取付面の高さに応じて設定された床面積を感知面積とする。
感知器の個数は設置したい感知器の感知面積と感知区域の面積の割り算で決定されます。
必要個数 = 感知区域の面積(㎡) ÷ 設置したい感知器1個の感知面積(㎡)
たとえば、床面積54㎡の居室(取付面の高さは4m未満)(その他構造)に、定温式スポット感知器の2種を設置したい場合は、
必要個数=54㎡÷20㎡→2.7
小数点は切り上げるので3つの定温式スポット型感知器が必要になります。
早い話が、感知区域の面積より感知器が感知できる範囲が小さいときは個数を増やさなければいけないということです。
実際に火災が発生したときに、広い部屋にぽつんと1つだけ感知器があるだけでは火災を感知できないかもしれないからです。
1つ注意したいのが『はり』の存在。
壁と天井に十分な隙間が空いていればひとつの感知区域として扱われますが、0.4m以上のはりがある場合は異なる感知区域として扱われます。
はりひとつで感知面積が変わってきますので、個数の計算をするときははりがあるかどうか注意して確認しましょう。
一つの部屋を区切るためのパーテーションなども同じで、天井とパーテーションのような区切りの間に、しっかりとした空間があれば感知面積を区切って計算する必要はありません。
ちなみに天井とパーテーションの間の空間は定義されていません。
施工する地域の担当者や条例によって異なる場合がありますので、事前に相談することをおすすめします。
取り付け位置についての基準は以下のとおりです。
・感知器の下端は取付け面の下方0.3m以内の位置に設けること。
・感知器は、換気口、空調やエアコン等の空気吹出口から1.5m以上離れた位置に設けること。
・感知器は取付面を基準に45度以上傾斜させないように設けること。
・火災を有効に感知できるように、感知区域内の平均した位置に感知器を設ける。
もし、差動式スポット型感知器を点検が容易にできない場所に設置する場合は差動スポット試験機を取り付けます。
差動スポット試験機の取り付けにも設置基準が設けられています。
・試験器は試験が容易に行える場所で、床面より0.8m~1.5mの高さに設置すること。
・試験器スイッチボックスを用いて露出、又は埋込工事で設置すること。
・感知器と試験器を接続する空気管は指定された長さ以内で接続すること。
4. 住宅用火災警報器の設置基準
住宅用として火災警報器を取り付ける場合は異なる設置基準で設置する必要があります。
必須なのが、住宅の寝室と寝室がある階段。この2つの箇所の設置が義務付けられています。
住宅の火災警報器の設置は義務付けられてはいますが、怠ったことによる罰則などはありません。
しかし、費用を抑えるために設置を見送ったり後回しにしたりすると、万が一火災が発生した場合に大惨事になります。
寝室と寝室がある階段に設置が義務付けられているのも、逃げ遅れで死亡するケースが非常に多いからです。
寝ているときに火災が発生し警報も鳴らず、気づいたときにはすでに手遅れ。なんていう自体を防ぐためにもしっかりと基準を守って設置しましょう。
また、上記以外にも各市町村の条例によって設置が義務付けられている場合もあります。
こちらも事前に管轄の消防に確認しておくと確実です。
自火報設備など、通常の感知器は天井に設置しますが、住宅用の場合は壁にかけて設置することも可能です。
壁に取り付ける際は天井から15〜50cm以内に住宅用火災警報器の中心が来るように取り付けましょう。
天井に取り付ける際は以下の点に注意して取り付けを行ってください。
・エアコンなどの空気の吹き出し口から1.5m以上離して取り付けること。
・照明器具からは30cm以上離して取り付けること。
・電波を発する機器の近くを避けること
・温度が0℃を下回るか、40℃を超える場所を避けること。
熱感知器の点検方法
消防設備は不特定多数の人が利用するような建物を対象としていて戸建の住宅などは対象外です。
ですが定期的な点検は安全確認のために重要です。余裕がある時にぜひ点検をしておきましょう。
自火報設備に属する感知器の点検をするには「消防設備士」「消防設備点検資格者」の資格が必要です。
有事の際に適切に稼働するかどうかをしっかり調べるために有資格者による定期的な点検が必要です。
細かい点検基準、点検方法については、総務省消防庁ホームページの「消防用設備等の点検基準、点検要領、点検票」からくわしいチェックリストやチェック表をダウンロードすることができます。
スポット型感知器は所定の加熱試験機を使用して、しっかりと作動するかの確認や確認灯などが正常に動作しているか、などをチェックします。
5. まとめ
今回は感知器の中でも熱感知器に焦点を当てて紹介してきました。
基本的にはスポット型感知器が使用されますが、工場などの広範囲な施設や景観を重要視している建物の場合などは、その他の種類の分布型感知器などを使用してもいいかもしれません。
また、設置基準も厳格に決められているため感知器の必要個数が増え、費用がかさんでしまうというような場合は天井高を下げられないかなどを視野に入れてみましょう。
専門家に相談すればどのようにやりくりすれば費用が抑えられるかも分かるかもしれません。
安全のためにもしっかりと火事の際に有効的に働くように備えておきましょう。
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