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2022.10.26
トイレでタバコを吸うな!その理由は?
トイレでタバコを吸ってはいけないと聞いたことがある人は多いでしょう。トイレは閉鎖的な空間でなおかつ狭いことから、万が一、火災が起きた場合は被害が心配です。
当然、ビルの管理者はトイレ内での喫煙を防ぐ必要があり、トイレでの火災に備えておかなければいけません。
この記事では、なぜトイレでタバコを吸うな!と周知しなければいけないのか、さらにはトイレの自動火災報知設備についても解説します。
【目次】
1. トイレと自動火災報知設備の関係
2. トイレでタバコを吸うな!の張り紙がある理由
3. トイレに設置できる感知器の種類
4. トイレにおすすめの感知器
5. トイレでタバコを吸わせないための工夫
1. トイレと自動火災報知設備の関係
実はトイレに自動火災報知設備を設置する義務はありません。法律ではトイレに自動火災報知設備を設置することは省略してもよいとされています。
これは消防法の第13条第3項第1号で規定されている「スプリンクラー設備を設置することを要しない階の部分等」の「浴室、便所その他これらに類する場所」に該当します。
トイレには火災報知器やスプリンクラーを設置しなくても問題はなく、法定点検でも違反にはなりません。
一方で、各自治体で異なる条例によっては付加設置が定められていることもあるため、一概に「トイレに火災報知器は設置しなくていい」とは言い切れないので注意しましょう。
暖房便座や自動洗浄機能付きトイレは例外
トイレに火災報知器を設置しなければいけない例外もあります。対象になるのが暖房便座や自動洗浄機能付きトイレといった機器の合計が2kWを超える場合です。
とくに近年では、神戸市が「電気便座付き便器又は自動洗浄乾燥式便器ヒーターを内蔵した機器」を設置する場合、漏電や機器故障による発火の懸念があるため、火災報知器やスプリンクラーの設置を定めています。(神戸市消防用設備等技術基準 P.165)
また、温水洗浄便座を設置しているトイレについては、法定点検の際に所轄消防署により火災報知器やスプリンクラーの設置について指導を受けることもあります。
このようなことから、建物管理者はトイレに火災報知器を設置することについて、あらかじめ各自治体や消防署に確認しなければいけません。
航空機のトイレでタバコを吸うことは厳禁
トイレには火災報知器が設置されていないケースが多いものの、航空機だけは例外のため注意しましょう。
一般的に、航空機のトイレには高性能煙感知器が設置されており、機内や空上での火災を未然に防ぐようになっています。
また、航空機内では空気の逃げ道が限られているため、タバコの煙が拡散しません。つまり、日常的には反応することがないタバコの煙程度であっても、航空機内の高性能煙感知器であれば火災として検知してしまうのです。
トイレ内で煙感知器が作動すると、コクピットに異常を知らせる信号が届き、最悪の場合は緊急着陸を余儀なくされるかもしれません。
日本国籍の航空機のトイレでタバコを吸うと「安全阻害行為等の禁止」に違反したことになり、機長による禁止命令を交付された後、罰金50万円の対象になります。(海外では身柄拘束もあり得る)
「トイレに火災報知器はない」と思い込んでいると思わぬ事態を招く可能性があるため注意しましょう。
2. トイレでタバコを吸うな!の張り紙がある理由
様々な施設のトイレ内でタバコを吸うな!という趣旨の張り紙が貼られていますが、その理由は、多くの場合でトイレに火災報知器が設置されていない可能性が高いためです。
先述したように、トイレに火災報知器やスプリンクラーを設置することは義務ではありません。また、法定点検の際にも違反にはなりません。(一部例外を除く)
もし、トイレ内でタバコの火や煙が原因で火災が発生した場合、火災報知器やスプリンクラーが設置されていない可能性があるため、初期消火の対応が遅れてしまいます。
トイレでタバコを吸うなという張り紙を頻繁に見かける理由は、トイレは火災発生時に初期消火が遅れやすいことが関係しているのです。
3. トイレに設置できる感知器の種類
トイレでタバコ吸うな!といった趣旨の張り紙だけでは火災予防としては不十分でしょう。
この場合、建物管理者は炎感知器や煙感知器といった装置を設置することになります。感知器の種類について以下でそれぞれ詳しく解説します。
定温式スポット型感知器(熱感知器)
トイレ内で発生した火災による熱の温度上昇を感知するタイプです。感知器の受熱板が一定の温度になると火災を知らせる仕組みになっています。
総務省消防庁の基準(P.75)では「周囲温度が、 公称作動温度より20度以上低い場所に設けてあること。」と規定されています。
定温式スポット型感知器は、キッチンなどの火元に近い場所に設置されますが、トイレにも設置されます。
ただし、トイレは水気が多いため「防水型」の定温式スポット型感知器が一般的です。
差動式スポット型感知器(熱感知器)
トイレ内で発生した熱を感知するタイプです。感知器の周辺温度が上昇するにつれて、感知器内部の空気が膨張し火災を感知します。
差動式スポット型感知器は、消防法の規定である「火災報知設備の感知器及び発信機に係わる技術上の規格を定める省令」によって感度が定められています。
差動式スポット型感知器は、設置場所や警戒面積によって1種と2種に区分され、1種は高感度に設定されており、2種はトイレや一般共同住宅に用いられます。
なお、火災ではない緩やかな温度上昇の場合は、感知器にあるリーク孔から空気が逃げる仕組みのため、誤作動しないようになっています。
光電式スポット型感知器(煙感知器)
火災による煙を感知するタイプです。感知器の内部に煙が入ると、感知器内の発光部から生じる光と煙の粒子が乱反射し、受光部がそれを感知することで作動します。
光電式スポット型感知器は1・2・3種に区分され、1種が高感度、2種が一般住宅用、3種が低感度になっています。
光電式分離型感知器(煙感知器)
煙を感知するタイプで、広範囲をカバーすることが特徴です。「送光部の感知器」と「受光部の感知器」2つを天井部で対照にセットし、目では見えない光ビームを作ります。
火災発生時の煙によって光ビームが遮られることで火災を感知する仕組みです。
赤外線式スポット型感知器(炎感知器)
火災による炎から放射される赤外線や熱線を感知するタイプです。一般的には「炎感知器」として認識されており、汚れに強いことからトイレに設置されるケースもあります。
赤外線式スポット型感知器は、多量の炭酸ガスから放射される赤外線の波長「CO2共鳴放射」と、1~15Hzの「ちらつき現象」を捉えることで火災を検知します。
紫外線式炎感知器(炎感知器)
炎による紫外線を感知するタイプです。紫外線が一定量以上になった場合に作動する仕組みで、赤外線式スポット型感知器と比較して感度が高い特徴があります。
紫外線式炎感知器は、極めて感度が高いことから安全とされている一方で、誤報を招きやすいことから、トイレや一般家庭で使用されることは少ないでしょう。
4. トイレにおすすめの感知器
トイレには「定温式スポット型熱感知器(防水型)」の設置をおすすめします。
多くの場合、トイレには火災報知器の設置義務はありません。しかし、トイレ内での喫煙による出火といった火災防止の観点から、火災報知器を設置するケースもあるでしょう。
このような場合、トイレは急激な温度変化が起こりにくいため、一定の温度上昇が認められるまで作動しない(誤作動が起こりにくい)「定温式スポット型熱感知器(防水型)」が適しています。
その際には、トイレ内の水気や湿気で機器が故障してしまう懸念があるため「防水型」を選ぶようにしましょう。
トイレでタバコを吸わないで!と張り紙でお願いするだけでは万が一の火災に対する備えとしては不十分です。
建物管理者は法定点検の際に火災に対する備えが十分であることを証明するためにも、積極的に火災報知器を設置した方が良いでしょう。
トイレに適していない感知器
煙感知器や差動式感知器はトイレには適していません。
煙感知器がトイレに適していない理由は、閉鎖空間のトイレではタバコの煙に反応してしまい、誤作動を頻繫に引き起こす可能性が高いためです。
また、トイレは湿気が多いことから、感知器が湿気によって故障してしまう可能性もあります。
差動式感知器がトイレに適していないのは、タバコが原因で火災が起きた時に作動するまでに時間がかかる可能性があるためです。
トイレに火災報知器を設置する際には、同じ火災報知器であっても種類が違うことを理解した上で選ぶようにしましょう。
5. トイレでタバコを吸わせないための工夫
火災報知器の有無にかかわらず、トイレでの喫煙は火災予防の観点から阻止しなければなりません。
一方で、トイレは人目につきにくい密室空間であることや、火災報知器の設置義務がないことを知っている人もいるため、トイレ内の喫煙は少なからずあるようです。
トイレでタバコを吸うな!という文言だけでなく「火災報知器を設置していること」さらに「タバコの煙で感知器が作動する」といった文言も含めた張り紙を用意すると良いでしょう。
万が一の火災発生時に初期消火を円滑にするために感知器を設置し、さらに張り紙を使ってタバコを吸わせないよう警告または周知することが有効です。
まとめ
トイレでタバコを吸うな!といった趣旨の張り紙を多く見かけるのには、自動火災報知設備の設置が関係していることが分かったと思います。
トイレには火災報知器やスプリンクラーなどを設置する義務はないものの、火災を未然に防ぐための取組みは必要です。トイレに自動火災報知設備を設置する際には感知器の種類や特徴を理解した上で設置するようにしてください。
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