消防用設備
2022.10.12
古いものは「型式失効」に注意!火災受信機の基礎知識について解説
防災設備である火災受信機は、火災発生時に地区音響装置を鳴動させ、関係者または消防機関に知らせるものです。
しかし「火災受信機の種類や役割は?」「耐用年数はどのくらい?」など、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、火災受信機の仕組みや種類、設置基準、古い火災受信機などについて解説します。
【目次】
1. 火災受信機とは
2. 火災受信機の種類
3. 火災受信機の設置基準
4. 古い火災受信機について
1. 火災受信機とは
火災受信機は、防災設備のひとつで建物の防災センターや中央管理室、守衛室に設置されている受信機です。
建物の各所に設置されている「感知器」が熱・煙・炎などから発生を検知します。
その後、火災を発見した人が「発信機」のボタンを押して発信します。
そして、「火災が発生した」という信号が「受信機」に送られ、地区音響装置を鳴動させ、関係者または消防機関に報知するものです。
火災受信機の機能
発信機の押下、非常電話の操作、消火栓の起動、警報として表示する機能などが備わっています。
火災受信機は、停電時であっても機能しなければなりません。
そのため、一定時間操作するための蓄電池が搭載されています。
また、火災表示は、火災原因が取り除かれた際に自動復旧させてはなりません。
人の手で確認し、火災が再発しないことが確認できた時点で、人の手によって復旧させる必要があります。
2. 火災受信機の種類
P型受信機(Proprietary-type fire control panel)
P型受信機は、感知器からの火災信号を警戒区域毎に共通線もしくは固有の信号を知らせるための従来からある受信機です。
PはPropietary(専有)を表しています。設置は中小規模です。
作動した感知器、起動した発信機の特定が受信機で不可となっています。
火災信号または火災表示信号を受信したときに、赤色の火災灯(接続できる回線の数が1のものを除く。)及び主音響装置により火災の発生を知らせ、地区表示装置(接続できる回線の数が1のものを除く。)により、火災の発生した警戒区域をそれぞれ自動的に表示し、さらに地区音響装置(接続できる回線の数が 1 のものを除く。)を自動的に鳴動させる構造のものです。
*警戒区域とは、⽕災の発⽣した区域を他の区域と区別して識別することができる最⼩単位の区域を指します。
警戒区域の中の感知器を1本の電線でつないでいます。警戒区域が増えれば増えるほど、配線も増えていく仕組みです。
感知器や発信機のうち、一つが発報すると、該当する警戒区域の地区灯が点滅します。
P型受信機のメリット
R型受信機と比べ、本体は低コストとなっています。
メーカーなどによって異なりますが、10万前後から購入できる場合もあります。
また、小規模対応でも大規模にもある程度対応できるものも存在します。
例えば、P型3級は1回線、P型2級は5回線、P型1級受信機は、100回線程度ある建物でも使用可能です。
対応回線を超えると、対応回線数が多い受信機に変更しなければなりません。
とはいえ、建物の規模に合わせて適切なタイプを選べるのもメリットと言えるでしょう。
一方、PA感知器 またはP-AT感知機 など、一部の機種で感知器特定が可能なものもあります。
R型受信機(Record-type fire control panel)
R型受信機は、感知器または中継器から火災信号、火災表示信号、火災情報信号をそれぞれ固有の信号として、設備作動信号を共通もしくは固有の信号として受信し、火災の発生を防火対象物の関係者に知らせるものです。
RはRecord(記録)を表しています。設置はP型に比べ大規模です。
R型受信機のメリット
作動した感知器、起動した発信機の特定が受信機で可能となります。
これにより、火災発生場所を細かく特定できます。
地区灯ではなく、液晶等の電子画面表示が備えられています。
この電子画面表示により、端末の情報が詳細にわかるのがメリットと言えるでしょう。
例えば、マンションや寮、病院、福祉施設など、どこで起きたかを知る必要がある建築物に適しています。
また、情報記録紙を時間ごとにプリントアウトする機能がついているのも特徴です。
データの取り扱いでパソコンとの連携が容易で、パソコン側でリアルタイムに情報を確認できる受信機もあります。
P型と異なり、警戒区域数によって電線本数が変わるわけではなく、伝送信号を使用することで配線数を少なくできます。
G型受信機
G型受信機とは、ガス漏れ信号を受信し、ガス漏れの発生を防火対象物の関係者に知らせるものです。
ガス漏れ信号を受信したときに、黄色のガス漏れ灯及び主音響装置によりガス漏れの発生を、地区表示装置(接続できる回線の数が1のもを除く。)によりガス漏れの発生した警戒区域をそれぞれ自動的に表示します。
GP型受信機
P 型受信機の機能とG型受信機の機能を併せもつものを指します。
GR型受信機
G型受信機とR型受信機の機能を併せもつ受信機を指します。
(参考:日本消防検定協会「消防機器早わかり講座 」)
http://www.jfeii.or.jp/pdf/lecture/10.pdf
3. 火災受信機の設置基準
火災信号等を受信した際、防災センターや中央管理室、守衛室など、警報伝達及び消火活動を行い得る人が常時いる部屋に設置しなければなりません。
設置場所の条件は、以下のとおりです。
・受信機の正面に直射日光が当たらない個所
・操作点検に際して適当な空間が保たれ、かつ、障害となるようなものが付近にない個所
・振動衝撃の影響を受けるおそれのない個所
・湿度又は温度が高い場所で機能に影響をあたえるおそれのない個所
火災受信機が外気に触れる箇所に設置している場合は、防水の格納箱への設置が必要となります。
設置位置
管理室がない小規模賃貸物件や小規模施設では、エントランスホールや廊下など、建物のうち、誰もが見やすい場所で、人がいる可能性が高い場所に設置が可能です。
そのため、天井面や床面といった操作困難な場所に設置してはいけません。
受信機の操作スイッチは、消防法により、床面からの高さが0.8m(椅子に座って操作するものは、0.6m)以上1.5m以下の位置となるように設置する必要があります。
受信機の周囲は、操作上または点検実施上支障とならない位置で、かつ、操作等に必要な空間を保有しなければなりません。
2台以上の受信機を設置するケース
1つの防火対象物に2台以上の受信機が設けられている条件は、以下のとおりです。
受信機のある場所相互間で同時に通話することができる電話又はインターホンを設ける。ただし、同一室内に2以上の受信機が設けられている場合は、当該等受信機間の通話装置を設けないことができる。
地区音響装置はいずれの受信機からも鳴動させることができること
設置方法
受信機は、直射日光、外光、照明などにより、火災灯、表示灯などの点灯が不鮮明とならない位置に設置しなければなりません。
さらに地震等の振動による障害がないように堅ろう、かつ、傾きのないように設置する必要があります。
自立型
取付けボルトなどを用いて、直接床面または壁面に、堅ろう、かつ、垂直に設置します。
また、地震等により、倒れないよう堅固に設置しなければなりません。
自立型の受信機等で、他の操作盤、配電盤等と並べる列盤式のものは、全体として、必要な空間を保有する必要があります。
離隔距離は、背面0.6m以上(背面に扉がある場合、なければ壁に直接可能)、左右0.5m以上、前面2m以上です。
壁掛型
座板等を使用し、脱落等のないように取り付けます。壁面の強度が弱い場合には、補強材を使用して取り付ける必要があります。
離隔距離は、左右0.3m以上、前面1m以上です。
4. 古い火災受信機について
消防用設備には品質や機能を保証するため、消防法21条の5にて「型式失効」という制度が設けられています。
消防用設備は、安全に使用できるものにするため、消防検定機関による検定を受ける必要があるのです。
受信機は、検定対象機械器具です。「受第◯◯~◯◯号」と 型式番号が記載されています。
従来規格の機器が新規格に適合しなくなった場合は、型式承認の効力が失われ「型式失効」として使用できなくなります。
特定防火対象物に設置済みの型式失効した機器は、交換が義務づけられているため注意が必要です。
特定防火対象物とは、不特定多数の人が出入りする建築物や火災発生時に避難などが困難である施設を指します。
なお、火災受信機の設備更新時期は、15〜20年が目安となっています。
(参考:(一社)日本火災報知機工業会「既設の自動火災報知設備機器の更新について」)
https://www.kaho.or.jp/pages/tenken/docs/bouka/koushin-201808.pdf
古い火災受信機の部品
防災設備の受信機は、生産を中止後、10年間は修理用として補修部品を確保するよう努めています。
しかし、電子部品メーカーの事情により、生産中止となる時期が早まる傾向にあります。
古い火災受信機の場合は、修理が不可能になる場合も少なくありません。
予期しない故障や部品がなくなってしまった場合、改修が終わるまで火災受信機を停止させなければならないのです。
したがって、耐用年数どおりに交換することをおすすめします。
古い受信機と新しい受信機は、蓄積機能の有無、再鳴動の有無、配線の断線確認、基盤の小型・軽量化などで判断できます。
火災受信機運用の注意点
火災受信機の動作確認を行う
火災受信機は、定期的に動作試験を行う必要があります。連動停止スイッチや自動復旧スイッチが定常状態かを確認します。
消防法17条3の3に規定される消防用設備等の点検・報告は、以下のとおりです。
機器点検:6ヶ月ごと、総合点検:1年ごとの点検です。
特定防火対象物:年1回、非特定防火対象物:3年に1回、所轄の消防署へ報告します。
地区音響装置は意図的に停止しない
火災が事実かどうかを確認するまでは、地区音響装置(地区ベル)は鳴動したままにし、意図的に停止させてはなりません。
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