消防用設備
2022.10.07
いまさら聞けない排煙口と手動解放装置について解説!
建物を作る際に重要なのが有事の際のシステム。
今回は火災が起きたときに煙を排出してくれる排煙装置について解説します。
排煙装置も法令点検が定められており、点検する箇所はさまざまです。
火災による死亡原因の多くは「煙」であることはご存知でしょうか。
火災は発生しないならそちらのほうがいいのですが、排煙装置はその万が一火災が発生したときのシステムです。
点検時には命を守るシステムということを念頭に置いて作業することが重要です。
【目次】
1. そもそも排煙口ってなに?
2. 設置基準について
3. 手動解放装置とは?
1. そもそも排煙口ってなに?
そもそも排煙口とは一体何でしょうか。
排煙口とは火災時の煙を屋外に排気することで避難を助ける装置のことです。
建築基準法と消防法により設置が義務付けられており、法律によって設置する意味が異なります。
建築基準法では在館者の安全・円滑な初期避難の確保を、消防法では消防隊の安全・円滑な消火活動の確保となっています。
排煙設備の違い
自然排煙
自然排煙は煙が上昇する特性を活かした排煙設備で、排出用の窓を天井付近に設置して緊急時に開放することで煙を室外へ放出します。
自然排煙設備は「特定建築物」の定期調査で点検対象となっています。
機械排煙
機械排煙は機械制御で強制的にダクトから屋外へ煙を吐き出します。
緊急時に使用するもののため非常用の電源も備えています。
どうしても窓を設置したくない場合や構造上窓が設置できない場合は、こちらの機械排煙の設備しか選択肢がありませんが、ダクトを通すスペースが必要だったり、コストが自然排煙よりもかかったりするケースが多く存在しています。
機械排煙設備は「建築設備検査」という検査で点検対象となっています。
どちらを選ぶかは基本的には自由ですが、建物のデザイン上の制限やコスト面などにより採用される設備が変わってきます。
2. 設置基準について
そもそもどのような建物だと排煙装置が必要なのでしょうか
法文をチェックしてみると基本的にはどんな建物でも排煙装置は必要です。
しかし特定の条件をクリアしていれば排煙装置が不要になるケースもあります。
排煙設備の免除に対しては建設省告示1436号通称「排煙告示」にて基準が明記されているので、排煙告示にて紹介されている例外ケースを噛み砕いて列挙していきます。
例外ケース
ケース1
病院、ホテル、マンション等で100㎡以内に準耐火構造の壁(開口部は防火設備)で区画された場合は免除される(共同住宅の場合は200㎡以内)
ケース2
学校や運動施設には排煙設備は不要。
ケース3
階段やエレベーター、その乗降ロビーなど
ケース4
工場内の倉庫で不燃性のものを保管する場合。ただし、主要構造部が不燃材料である必要あり。
簡単に列挙しても上記に類する施設や共用部などは排煙装置の設置が免除されています。
正確にはさらに複雑に免除条件がありますが、裏を返せば排煙装置の免除が許されている条件がたくさんあるとも言えます。
排煙告示を読み込んでみると学校や運動施設以外は建物の一部に対しての条件です。
つまり排煙装置の設置が免除されている大部分は建物の一部で、建物そのものに排煙装置を設置しなくても良いということではありません。
更に詳しく述べると、排煙装置が免除されている部分とそうでない部分はしっかりと区画されている必要があります。
これは更にややこしくしている要因なのですが、区画方法もモノによって異なるんです。
ここでは割愛しますが免除される条件を考えるときに重要なのは
・どの免除緩和規定を利用したいのか
・免除規定で免除されているのは建物そのものか建物の一部かどうか
・建物の一部の場合しっかりと区画を引く
以上の3つを押さえてさえいればまず間違いないでしょう。
排煙装置が免除される条件について述べましたが、逆に排煙装置が必要な場合はどのような条件があるのでしょうか。
排煙設備により変わってきますのでそれぞれ見ていきましょう。
自然排煙の場合
条件1:排煙口の面積は防煙区画された部分の床面積の1/50以上の面積を有していなければならない。
条件2:また、排煙口で有効とされるのは天井面から80cm以内の範囲まで。
条件3:排煙口には床面から80cm以上150cm未満の高さに手動解放装置を設置しなければならない。
もしくは煙感知器と連動する自動解放装置又は遠隔操作方式による解放装置が必要。
機械排煙の場合
条件1:機械排煙の場合の排煙機の能力は1分間に120m³以上、かつ、防煙区画の床面積1㎡につき1m³の空気を排出する能力を有している必要がある。
条件2:電源を必要とする場合は予備電源が必要で、高さ31mを超える建物の場合は、排煙設備の制御、作動状態を中央管理室にて行えるようにしなければならない。
条件3:排煙口は不燃材料とし、排煙風道は不燃材料かつ木材等の可燃材料から15cm以上離さなければならない。
このように形式に関わらず、条件が複数あるため建物の景観やコストと照らし合わせながら、どちらの排煙設備がよりふさわしいかを吟味していく必要があります。
例外条件もありますが、有事の際の命を守る手段のため法律に照らし合わせながら丁寧に考えましょう。
3. 手動解放装置とは?
手動解放装置とは操作することで排煙口を開け、排煙機を運転させる装置のことです。
法令点検時には手動解放装置の運転状況を調べる必要があります。
手動解放装置についても法令で以下の通りに定められています。
条件1:排煙口には手動解放装置を設けること
条件2:手動開放装置のうち、手で操作する部分は床面から80cm以上、1.5m以下の高さの位置に設けること。(壁に設置する場合)
条件3:床面からおおむね1.8mの高さの位置に設けること。(天井から吊り下げる場合)
条件4:見やすい方法でその使用方法を表示すること。
排煙口ほど厳しい条件はありませんが、設置は必須でしっかりと届きやすく、わかりやすい操作方法を明記しておく必要があるということです。
また、壁に設置する際は80cm〜150cmの間で設置する必要があります。
範囲は狭いですが、多くの人の手が届きやすい高さに限定されています。
少しオーバーして違法であるという判断がくだされた事例もありますので高すぎないということも重要です。
一般的に、火災やそのほか有事の際には通常ではできている判断ができません。
そのため誰でもどのようなときでも利用できる状態にしておく必要があります。
また、実際に手動解放装置を取り付けた後、法令に準拠していても建物確認審査時にボタン式に変更するように指導されるケースもあります。
最後の段階での指導は修正するのも容易ではありません。コストやデザインの観点からボタン式以外を採用する場合は、事前に適切なところで確認を取るほうがふさわしいかもしれません。
手動解放装置の種類について
設置が必須な手動解放装置ですが、さまざまな種類が存在しています。
今回は主に使用されている2種類を紹介します。
電気式
電気式は押しボタンがあるタイプのものでボタンを押すと自動で排煙口が開放されます。
ボタンを押すだけなので年齢、性別などを問わずに簡単に排煙装置を起動できるのがポイントです。
ボタンがあるだけなのでサイズも小さく景観を大幅に損なわずに設置することが可能です。
ワイヤー式(レバー式)
ワイヤー式は装置の格納庫の中にハンドルが入っているもので、ハンドルを引くだけで装置を使用することが可能です。
ハンドルが格納されているのでボタン式よりも大きく緊急時でも目につく作りです。
しかし上記でも触れた通り、手動解放装置をワイヤー式で設置しても、建物確認審査のときにボタン式に変更するよう指導が入るケースもあります。
ワイヤー式を選択する場合は事前に確認を取るなどするほうが安全といえます。
点検時の注意点
排煙窓は火事が起こらないと作動することもありません。
長期間放置していると劣化や破損により排煙機能がうまく作動しないことも考えられます。
そのための法令点検ではありますが、ここではよく見られる故障原因をご紹介します。
・排煙窓がうまく開閉しない
これは窓周りのゴムが経年劣化により張り付いたり固くなったときに起こりやすい現象です。
また、サビつきや歪みの可能性もあります。
定期的な点検をしていても、急激な気候の変動などによる外的要因で劣化したのかもしれません。
日本は世界的にみても地震大国。
小さな地震が常に起こっているような国ですので、度重なる地震の影響で歪みが生まれてしまうのかもしれません。
排煙口が誤って作動した場合の復旧方法
なにか物が引っかかって排煙設備が誤動作したり、利用している方が別のボタンと混同して誤って押してしまったりすることもあります。
もしかしたら本当に火災が発生しているかもしれませんが、今回は排煙設備が誤動作した場合の復旧方法についてご紹介します。
ただし、排煙設備にも種類がありますので一概にこのパターンとも言い切れません。
流れを確認したら一度ご自身の担当しているビルや利用している建物の復旧方法を調べることをおすすめします。
重要なのが連動停止をしっかりすること。
消防設備は他の設備と連携していることが多く、一度排煙設備が作動すると館内に緊急アナウンスが流れたり、エレベーターが移動したりしてしまいます。
そのため誤作動と判明した場合は他の設備が緊急時の動作をしないように「連動停止」する必要があるんです。
連動停止が完了したら次に排煙機を停止。
排煙機の近くに停止ボタンがあるはずですので停止ボタンを押します。
これで排煙機能が停止します。
最後に排煙口を閉じて終了です。スイッチを押したり、ハンドルを回したりすることで排煙口を閉じることができます。
まとめ
今回は排煙口について解説してきました。
法令点検時には必須の点検対象となる排煙口ですので、しっかりとした知識を身に付け安全な点検が行えるようにしましょう。
消防設備点検なら全国消防点検.comまで
全国消防点検.comでは消防設備点検のご相談を承っております。
「古い建物でいつ設置されたものかわからない・・・」
「漏電火災警報器についてよくわからないし、点検もしているのかな?」
などなど、些細なことでもご相談を承っております。
消防点検に限らず、様々な設置や点検等も承っており、
依頼する業者をまとめたい、点検類をまとめて依頼したいなど幅広くご相談が可能です
まずはご相談だけでも大歓迎です!
どうぞお気軽にお問い合わせください。