消防法
2021.04.27
【建築基準法】防火戸(防火扉)の設置基準について解説
大きなショッピングセンターや駅、ビル等の中でよく見かける「防火戸(防火扉)」。
この防火戸は火災発生時に延焼を防いでくれるもの。
今回は防火戸について解説します!
【目次】
1. まずは防火戸についておさらい
2. 【建築基準法】防火戸の設置基準
3. 防火戸が消防法に違反していませんか?
1. まずは防火戸についておさらい
防火戸(防火扉)は前述したとおり、延焼を防いでくれるものです。
火災発生時に閉鎖することで、一時的に炎と煙をせき止め、
隣の区画に延焼するのを防ぎ、避難の時間を稼いでくれます。
防火区画ごとに設置が必要で、
階段等に設置されているのを見かけることが多いかと思います。
防火戸(防火扉)はそれぞれ異なる条件の防火区画に合わせて設置する必要があります。防火区画には、面積区画、高層区画、竪穴区画、そして異種用途区画があり、それぞれで基準が設けられています。
また、防火シャッター、防火扉も正式名称は「防火戸」で、同じ役割を担っています。
「乙種防火戸」は、閉鎖時に、通常の火災時における火炎を有効に遮るものと定義されている。隣接する建物からの延焼を防止するため、建築物の外壁に設けられることが多く、一定程度の密閉性を持っているのが特徴です。一方、「甲種防火戸」は特定防火設備のことで、通常の火災の火炎を受けても1時間以上、火炎が貫通しない構造と規定されています。
(2000年に建築基準法が改正され、『乙種防火戸』は『防火設備』という名前になりました。防火設備には、防火シャッターや網入りガラスも含まれます。ちなみに、『甲種防火戸』は『特定防火設備』に変わりました。)
※防火シャッターについて詳しく知りたい方はこちら
2. 【建築基準法】防火戸の設置基準
建築基準法等、防火戸(防火扉)に係る法令は複数ありますが、
防火戸の設置が必要になるのは以下のような箇所になります。
外壁の延焼の恐れのある部分
※四日市市危険物規制審査基準より引用
外壁の延焼の恐れのある部分とは、
簡単に言うと隣や敷地内の別の建物で火事が起きた時に、
延焼しそうな部分のことです。
建築基準法では以下のように定義されています。
建築基準法より以下抜粋
(用語の定義)
第2条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。〈中略〉
六 延焼のおそれのある部分
隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線から、1階にあつては3m以下、2階以上にあつては5m以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。
特定防火設備の防火扉は、屋内で発生した火炎の延焼を防ぐ目的で防火区画の開口部に設置します。
面積区画
主要構造部が耐火構造になっている建築物や準耐火建築物では、100㎡~1500㎡ごとに区画し、
横への燃え広がりを防止するとともに、一度に避難する人数を制御するために、
耐火(準耐火)構造の壁や防火戸(特定防火設備、防火設備)で区画する必要があります。
※10階までの中低層と11階以上の高層とで区画の条件や必要な防火戸が変わります。
100~1500㎡ごとに防火戸等で区画を区切り、水平方向への延焼を防ぎます。
また、この防火戸で区切られた1区画を防火区画と呼びます。
たて穴区画
階段室やエレベーターの昇降路、吹き抜けなどのたて穴部分への設置が必要です。
火災発生時に階段等を伝って延焼する可能性が高いためです。
避難階段
避難階段とは、災害時に安全に避難できるように設けられた、
直接地上に通じている階段のこと。
とくに高層建築物は、火炎によって階段が使えなくなってしまうと、
消防隊の救出が困難な場所に取り残されてしまう可能性が高く、とっても危険。
火災が発生しても多くの人が安全に避難ができるよう、
延焼を防ぐ防火戸等の設置が必要です。
その他、防火区画の外周部や異種用途区画、地下街など、
設置する必要のある場所はたくさんあります。
前述したケース以外にも(防火扉)が必要となるケースもあるので、
詳細は全国消防点検.comまでお問い合わせください。
3. 防火戸が消防法に違反していませんか?
建築基準法に沿って防火戸(防火扉)を設置後、普段の使用状況も火災から身を守る上で大変重要です。
とくに防火戸周りは「うっかり消防法違反」が起きやすい場所でもあります。
・荷物の搬入のために防火戸にドアストッパーを挟み、開放している
・防火戸の閉まる部分に荷物がある
実はこれ、立派な消防法違反。
防火戸は前述したとおり、扉を閉めることで延焼を防ぐ設備。
そのため、常に開放したままの状態にしておいたり、
開閉の妨げになる場所に荷物を置いてしまうと、
いざという時に閉められず機能しなくなってしまう可能性が高いのです。
防火戸が機能しない=甚大な被害になる可能性も
2001年9月、新宿歌舞伎町で発生した歌舞伎町雑居ビル火災。
ニュースでも大きく取り上げられ、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
地上4階・地下2階立て、述べ516㎡という狭い敷地面積にも関わらず、
44人の命が失われ、3人が負傷する被害を出し、日本で起きた火災としては、
2019年の京都アニメーションの火災に続き、戦後5番目の被害となりました。
3階のエレベーター付近から火炎し、その後4階へ延焼拡大。
階段室を伝って煙が立ち上り、一酸化炭素が充満してしまい、
多くの人々が死に至りました。
避難経路や防火戸の周りにはゴミや使っていない備品等が置かれており、
防火戸が開放されたままの状態になっており、
火災発生時に防火戸の役割を果たしていなかった事がわかっています。
このように、日々の中で起こりがちなちょっとした消防法違反が、
万が一の時に大きな被害を呼んでしまいます。
少しだけなら・・・なんて思わず、
防火戸は開閉が出来る状態(周りに荷物等がない状態)を
常にキープすることが大切です。
一時的に炎や煙を一定の箇所に留めることができれば、
消防署への連絡や、避難経路を確保する時間を稼げるようになります。
防火対象物定期点検は全国消防点検.comにお任せください!
そしてもう1つ大切なのは、定期的な点検を行うこと。
とくに消防設備等は日常的に使用しているわけではなく、
いざという時に初めて動作するものが多いです。
定期的な点検・メンテナンスを怠ってしまうと、
いつの間にか故障していて、いざという時に使えないという事も起こりえます。
全国消防点検.comでは、防火戸を含む防火対象物定期点検のお手伝いを承っております。
※防火対象物点検についてはこちら
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